少女はその日、運命を左右する出来事に遭遇する。
お昼休み、私は昼食を屋上で食べることにした。
、15歳。
来神に入って1ヶ月。知り合いはたくさんできたけれど、クラスには馴染めないでいた。
来るもの拒まず去るもの追わず。その言葉がまさしく当てはまる生活。
その原因は、私の外見にあると思う。昔からのコンプレックス。
イギリス人の母の血を色濃く受け継いだ私の髪はプラチナブロンドで、瞳の色も日本人とはかけ離れた緑色。
クラスではかなり浮いていた。
屋上に出ると視界いっぱいに青空が広がる。
雲のない真っ青な空に、少しだけ嫉妬した。
フェンスに寄りかかってパンを頬張る。広い屋上に人の気配はなく、何だか落ち着いた気分になる。
これからも屋上で食べることにしよう。
パンを食べ終わったところで、携帯電話をいじりながら紙パックのジュースをすする。
携帯電話、通称ケータイは1年くらい前からじょじょに流行りだしたもの。高校生で、クラスの半分が持っているくらい。
カメラが付いている最新モデルで、インターネットもこれでできるんだっていうから最初はびっくりした。
パケ代も気になるから、パケ死しない程度にチャットしたり、待受画像を探したり。
ふとそこで、階段を上ってくる音がすることに気がついた。
誰だろう。同じクラスの人だったら移動しようかな。
ケータイをいじる頭の角度はそのままに、目だけドアのほうに視線を向ける。
やばい、2年の平和島先輩だ。
ドアに向けた視線を瞬時にケータイに戻す。
クラスの子が、かなり危ない人だと噂しているのを聞いたことがあった。
何でも折原先輩、とやらと犬猿の仲らしい。
近づかないほうがいーよ、なんて話をしていた。
私も1回だけ、校庭でサッカーのゴールを投げ飛ばしているのを見たことがある。
あの時は、力ずくでゴールって抜けるんだ、なんて思ったけれど。
平和島先輩がドアの前からいなくなったら移動しようそうしよう。
そして私は、視線をドアに向けた。