first contact

平和島先輩に家まで送って貰った翌日。
昨日の発言のあまりの恥ずかしさにお昼休みが来るのが怖いような楽しみなような複雑な気持ちでいたら、 その時間はあっという間に来てしまった。


!今日日直だったよな。これ、仕舞いにいってくれないか?」
「あ、…はい。わかりました」


いやな仕事を先生に押し付けられた。今日一緒に日直の子は…手伝ってくれる気配もない。 よりによって四時間目は地理の授業で、資料やら地図やら、荷物が多い。 仕方ない、一人で行くしかないか…。


地図の黒板にかける紐の部分に腕を通して背負い、資料集を手に持つ。我ながら不安定な持ち方だな、と思うけど、 こうしないと往復しないといけない。せっかくのお昼休み、しかもまだパン食べる前だし、時間を無駄にしたくない。 財布はポケットに入ってるし、置いた帰り道に購買に行ってパンとジュースと、平和島先輩に渡すコーヒーを買おう。
地図が邪魔すぎて、よたよたとした歩きになる。階段大丈夫かな、コレ…。




ガタッ



「あっ……」



やばい、落っこちる




「あぶねっ!」





案の定、階段を降りるときに地図が足にぶつかって、階段を踏み外した。

と、同時に引っ張られる腕。
落ちてく資料。
不安定な体勢。




「ったく、そんなにいっぱい持ってたら危ねぇだろうが」


私の腕をつかんだ人は、私を階段に座らせると、下へ降り、資料を拾ってくれた。
あれ、見慣れた金色…。平和島先輩だ。
やや放心状態で平和島先輩を見ていると、さっさと資料を拾い集めた先輩が私に近づいてきた。


「お、おい。大丈夫か?」
「あ…はい。ちょっと魂抜けてました。びっくりしすぎて」
「(…魂?)…怪我とかないか?」
「た、多分…。大丈夫です。あ、すみません、資料…」
「別に…。これ片付けるだけだろ?俺行くから。一人じゃ無理だろ、この量」
「え、は、はい。ありがとうございます」


左手に地図を持ち、小脇に資料を抱えて、すたすたと平和島先輩は行ってしまった。
慌てて私も追いかける。ドア開けてくれ、と言われ、急いで開けると平和島先輩は適当に荷物を置いてすぐ出てきた。


「ありがとうございました、助かりました」
「いや……じゃ、俺購買行ってくるわ」
「あ、私もまだ買ってないんで、一緒に行ってもいいですか?」
「…おう。」
「昨日のお礼と今日のお礼ってことで、奢りますね」
「…じゃあ言葉に甘えるわ」


そのまま購買に行った私と平和島先輩。
自分のパンはささっと決め、ついでにイチゴ牛乳のパックを持って平和島先輩が選ぶのを待つ。 惣菜パンひとつと、牛乳のパックを渡される。コーヒーじゃなくて、牛乳でいいのかな…?


「あれ、パンひとつで足りますか?」
「いや、そんな何個もわりぃだろ」
「別に大丈夫ですよ」
「いいから」


背中を押されてそのままレジに行く。その後ろに平和島先輩もパンを1個持って並ぶ。なんだやっぱり足りないんじゃん。
会計をして、抱きしめるように抱えて、平和島先輩と屋上に続く階段を上る。 自分のものは自分で持ちたいのか、さっきからチラチラと視線を感じるけど無視。 資料とか持ってもらったし、という私のちっちゃな意地。
屋上について、定位置に座り、買ったパンと紙パックを分ける。


「はい、どうぞ」
「サンキュ」


平和島先輩は口元だけで笑い、フェンスに背を預ける。
私もいつもどおりフェンスに背を預け、パンの口をびりっと開けた。




(今日のわたしとせんぱいの距離、1メートル)
(いつもより近いその距離に、なんだか仲良くなれそうな気がした)






20110318