「サン、だよね?」
「はわたしですけど、何か?」
梅雨もやっと明けたのか、今日は晴天。意気揚々と久しぶりの屋上に上がって、座ろうかと思ったところで声をかけられた。
―――折原先輩だ。
「シズちゃんと仲良くしてる一年生がいるってウワサで聞いて気になっちゃってね」
「はあ…そうですか」
「で、シズちゃんとはどんな関係なの?」
「…ただの屋上仲間、というかお昼仲間ですけども」
「ふーん」
な、なぜ近寄ってくる。
一歩近寄られるごとに、一歩後ずさっていたら、背中に当たってフェンスがかしゃん、と鳴った。
「僕個人としても、君にはすごーく興味を持ってるんだけど」
どんどん近づいてくる、折原先輩。
「1年3組、さん。母親がイギリス人で父親が日本人のハーフ。母親はヴァイオリニストで、父親は会社役員。
ハーフだけど英語は喋れない。日本生まれの日本育ちで一回も東京から出たことがない。それで――」
「やめてください」
「ふふっ」
なんだ、この人。こわい。
「それでちゃんは――」
横に避けようとしたら、フェンスに両手をおく折原先輩。私の逃げ場がなくなった。
「シズちゃんのことどう思ってるのかな?」
「……っ!」
こわい。
「いぃぃぃざぁぁぁぁやぁぁぁぁぁっ!!」
「おっと、邪魔されちゃった。シズちゃん。僕たち今すごーくいい雰囲気だったのに。
人の恋路を邪魔する者は、タンクローリーに踏み潰されて死んじまえっていうでしょ」
「殺す殺す殺す殺すっ…!」
「じゃあ、ちゃんまったねー」
ちゅっ
こ、こいつ頬にキ、キスし…!!!
かぁっと、頭に血がのぼった。
静雄先輩も目を見開いてる。
二人で固まってる間に、折原先輩…いや、オリハライザヤは去っていった。あんな人先輩なんて敬称つけたくない。
「、まさかとは思うが…あの…ノミ蟲のことが…」
「はあっ?」