「、携帯よこせ」
「え?は、はい」
パンを食べるのも忘れて、ようやっと泣き止んだ私に、静雄先輩は唐突に言った。
大人しく静雄先輩に携帯を差し出した。テディベアのストラップが静雄先輩の手元で虚しく揺れている。
何だか静雄先輩は自分の携帯と私の携帯を交互ににらめっこし、つい、と私の携帯を差し出してきた。
「俺の番号、とメアド、登録しといた」
私が受け取ったことによって空いた手で、がりがりと頭を掻く静雄先輩。
「あー、またあのノミ蟲に絡まれたら、すぐ連絡しろ。あとなんかあった時も。電話でも、メールでもどっちでもいいからよ」
「あ、ありがとうございます」
オリハライザヤを思い出したことと、心配してもらえてちょっとうれしいので、また涙目になってきた。
「できるだけ、もう二度と会わないように頑張ります。怖いので」
「おう。関わらないに越したことはねぇ」
タイミングよく、5時間目終了のチャイムが鳴った。
「じゃあ、私、6時間目の授業行ってきますね」
「おう、いってこい」
6時間目の授業中、グラウンドでサッカーのゴールを持ってオリハライザヤを追いかける静雄先輩を見たような気がしたけど、
気にしないことにした。関わらない関わらない。オリハライザヤ?だれそれ?
授業が終わって、帰る準備をする。帰宅部だし、無駄に残っててもしょうがないし、さっさと帰る。
ピピピッ ピピピッ
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気をつけて帰れよ。 |