first contact

やばいやばいやばい!え、どこいっちゃったの?


どうしよう、失くしちゃった




携帯がない。

お昼休みになるまで気づかないなんて…!
朝来たときには、あったはず。というか絶対あった。静雄先輩とメールしたもん。

とりあえず机周りを探す。
ポケットにも、机の中にも、カバンの中にもない。

移動教室のときに置いてきちゃったのかな。
一時間目は、古典。二時間目は音楽。三時間目は化学。四時間目は英語。 間に一回トイレに行ってるから、音楽室か、化学室か、トイレにあるはず。なかったら困る。

クラスメイトにも聞けないし。普段しゃべったことないのに、「私の携帯見かけてない?」なんて。
見られてやばいものとかはないけど、無いと不安になる。 静雄先輩には悪いけど、屋上に行く前に捜索活動しなきゃ。


そのとき、ざわざわとクラスが騒がしくなった。


「――おい、ってこのクラスか?」
「――は、はい!よ、呼んできますっ!」


(――平和島静雄だ!)
(――呼び出しか?)
(――何かやったのかな?)
(――つか木ノ下も災難だな)


とりあえず携帯見つかったらすぐ購買行けるように、財布は持って…


「あの、さん?」
「はい?」


クラスメイトの…木ノ内さん?だっけ?初めてしゃべったような気がする。


「へ、平和島静雄…先輩が来てるんだけど…そこに…」
「あ、はい。分かりました」


静雄先輩がクラスにくるなんて珍しい。 とりあえず持った財布をカバンに戻して、クラスの扉に寄りかかってる静雄先輩に駆け寄る。


「お待たせしてすみません」
「いや…。これ、のだろ」


静雄先輩の手の中にあったのは、見慣れた白の携帯電話。テディベアのストラップもついてるし、これは確実に――


「あ…!!私の携帯!」
「さっき化学の授業で、机ん中にあったんだ。見たことあるクマがついてると思ってよ」
「探してたんです…!ありがとうございます!」


携帯を受けとってホッと一息。思わず安堵の笑みがこぼれた。
ランプが点滅していて、開いて確かめると静雄先輩からの不在着信。
画面を覗き込んだ静雄先輩が弁解した。


「や、万が一のじゃなかったらと思って確認したんだよ。勝手に覗くわけにもいかねぇし」
「いえ、本当に助かりました」


勝手に携帯の中身見ないなんて、さすが静雄先輩だ。オリハライザヤとは全然違う。
待受画面に戻ったところで時間を見ると、お昼休みが始まってからすでに10分近くたっている。


「私、これから購買行ってから、お昼いきますけど…」
「ああ、俺も行く」
「じゃあお財布取ってきますね!」


席に戻り財布を取ってまた静雄先輩のところに戻り、そのまま二人で購買へ。
残されたクラスメイトが信じられないような目で見ていたなんて、知る由もなく。




(――平和島静雄が誰かを構ってるとこ初めて見たんだけど!)
(――つーか綺堂さんが笑ってるとこも初めて見たな)






20110322