ガラス越しに、店内を覗く。
店の中にいる女性は、忙しく書類に目を通していた。

ホグズミード内でもまだ知名度の低いこの店の主は、我輩の最も愛する女性、

初めて彼女を知ったのは確か3年生の頃。
我輩がグリフィンドールの馬鹿どもに絡まれているとき、 どこからともなくやってきてブラックたちを連れ去っていくグリフィンドール生だった。
という名前を知ったのはそれから随分後のこと。
しかし全く興味のないの人間の名前など、我輩はすぐに気にしなくなり、 初めて話したときには彼女のことなどすっかり忘れてしまっていたのだが。

5年生の終わりに付き合い始め、数回に渡り情交もした。
お互いに初めての恋人だったが、これ以上ないほどを愛していた。
卒業するときには、から「卒業してもあなたの恋人でいさせてほしい」と言われ、 我輩は「全てが終わったらのことを迎えにいく」と約束した。

闇の陣営に身を置いている以上、表向きはどちら側にもついていないに、 表立って会うことは出来ない。 会えば、協力するか、しないかを決めてもらわねばならない状況になる。 今の闇側の活動など、大半がそんなもの。 今のところは――今日のように――目くらまし呪文で姿を隠し、 の無事を確認するのが精一杯といったところだ。

一刻も早く闇の時代が終わるよう、最近になってダンブルドアとも手を組み、 二重スパイをしている。
大切なものを守りたい、その気持ちだけで生きている今、 を失ったら生きていけないのではないかと本気で思う。

女々しくも甲斐甲斐しく、ここ数年間、 2,3ヶ月に一遍ほどの頻度での顔を見にホグズミードまで足を延ばし、 に宛てた手紙を店先に置いて帰るのが習慣となっていた。


そして今日もが無事に生きていることを確認し、 闇側の本拠地に向かうのだった。





――それはレイがいなくなり、ポッターたちが殺される1週間前のこと。





2006/2/15 UP
S.S Festival出品作品