第1話


殺風景な部屋に一人の少女が佇んでいた。

「今日からココが私の家か。家具まで揃っちゃってご丁寧なことで」

皮肉っぽく言ってみるものの、少女の他には誰もいない。
少女の名前は『死の蝶』――宇堂





私には両親がいない。
物心つくころには兄のアキラと2人っきりだった。
そこに海人が現れ、亜紀人と仲良くなり、幸せな生活だった。

アキラがいなくなってからはずっと、海人が兄だった。
最近亜紀人もいなくなっちゃったからちょっと海人が心配だったりする。

そして数日前、エアトレックが嫌いな海人が珍しくバトルを見に来た。
「今日は仕事じゃないんだねー。つーか珍しいね?」
「おい。お前、転校しろ。手続きは済んであるからな」
「いや、意味分かんないんだけど」
「あぁ、あとお前家帰っても何もないから逃げるなよ」
「はぁぁぁっ!?」
相変わらずこの人のワンマンっぷりには目を瞑りたくなります。

…というわけで私、宇堂は今日から東雲東中の生徒になります。
つーかこの時期に転校って…。


「時期はずれの転校生、宇堂ちゃんでーす。仲良くしてあげてねー」
「ども。宇堂です」

何とも間の抜けた教師だな、おい。

「あぁぁぁぁぁ!!!」
「あ?」

なんか聞き覚えのある声だなぁ…

ちゃんっっ…」
「あ、亜紀人だ」
「お前、知り合いだったのかー?」
何か表情がおびえてるような気がするのは放っとくとして。
お、今亜紀人に話しかけたニット帽君結構良い男じゃないか。
ん…?突っ伏して寝てる男って…

「あーーー!南イッキ!!!」
「ん?誰かが俺様を呼ぶ声が」

スタスタ…と南イッキの方に歩いていくとどうやらやっと私の存在に気づいたようだった。

「いやぁ、こんなところで会えると思わなかったなぁ。私もA.Tやってるんだよ」

亜紀人がちょっと悲惨な顔をしてたのに噴出しそうになった。





next

2005/9/4 UP