第5話


簡単なミーティングを終えた後、左くんはすぐ帰ってしまった。
久しぶりに集まった私たちは、ヤマトの手料理を堪能するまでの間、タカトのゲームをやり始めた。
私とシュウが対戦している後ろでは、ヤマトがタカトに冷蔵庫の中身についてお説教をしていた。
どうやら冷凍食品ばかりのようだったらしい。


「あー負けたぁ」
「俺様に勝つには10年早いぜ!」
「シュウ、大人気ないね」
「だよねぇ!」

シュウには一度も勝ったことがない。
さすがグループ「武神」のリーダーだけあるわ、A.Tじゃなくてゲームだけど。
悔しいから何度も挑戦しちゃうんだけどね。

「俺買い物行ってくるわ」
「じゃぁバンホーテンのココアよろしく!」
「俺リプトンのミルクティー」
「お前ら・・・」

タカトが玄関に行くと、タカトの携帯が鳴った。

「もしもし・・・はぁ!?ミツルが殴りこみ?」

「「は!?」」

タカトの声に、思わず反応してしまった。
それはシュウも同じだったらしい。

「ちょ、私出てくるから!」

カバンはタカトの家に置きっぱでもいいよね。
急がなきゃ!





タカトの家から出てきたはいいものの、場所くらい聞いておけばよかった・・・
エミリちゃんとしかまだ電話番号交換してないし・・・

途方にくれていると、デコチャリを走らせた風ちゃんを見つけた。
あんなデコチャリを漕いでる人はこの街では四聖獣の4人だけだと思うんだよね。
目立つ目立つ。

「風ちゃーん!」
「あ、じゃん。つーか風ちゃんはないだろ。風明。ふ・う・め・い」
「風ちゃんでいいじゃん。つかミツル知らない?」
「あぁ、いまからアイツんとこ行くとこ。何?用事?」
「いや、小烏丸がボコボコにされてるんじゃないかと思って」
「なるほどねー」
「あ、今日決めたんだけどねぇ、小烏丸はベヒーモスに任せることになったから」
「はぁ?Fクラスだろ、そいつら。下のチームでも十分なんじゃねぇの」
「詳細は兄貴から聞いて」
「そういや夜に集まるんだったな」

走りながらしゃべっていると、商店街に入った。
デコチャリを止めている風ちゃんを見やりながら、辺りを見回すと、転がっているオニギリくん、
丁度殴られ、吹っ飛ばされたイッキくんとその反動で倒れたブッチャくんが見えた。

「あー、遅かったかー」
「何だ、弱ぇなぁ」

壁に寄りかかる風ちゃんを置いて、ミツルに近寄る。

「ミツル、やりすぎ」
「久しぶりだね。。・・・元はといえば、そこに転がってるヤツが僕のマシンに触れたんだよ」
「・・・そう」

振り返ると、イッキくんに寄り添うリンゴちゃん。
あー酷い顔。

「カズくん、とりあえずオニギリくんを病院に連れてった方がいいと思うよ。
 ミツル。これ以上の手出しは無用よね。今日はミーテって聞いたでしょ?行くわよ」

早口で言うと、ミツルはまだやり足りない、と言う顔をしたもののデコチャリのハンドルを握った。

「自己紹介が遅れたね。
 ベヒーモス、四聖獣「サイクロプスハンマー」の坂東ミツル。よろしく」

そう言って、デコチャリに跨った。
そして視界の端で風ちゃんを見つけたらしく、先ほど私がやってきた方向へ走っていった。

「イッキくんとか大丈夫?」
「うん・・・多分・・・」
「宇堂、あいつらとは・・・――」
「元はといえば小烏丸が悪いのよ?
 ベヒーモスの傘下チームにだけじゃなく、邪鬼にも手を出すんだもん。
 うちのチームは、ベヒーモスに全てを委ねることに決めたから」

そこまで言うと、後ろから「!」とミツルが呼ぶ声がして、
「じゃ、また明日」と言ってみんなの前から離れ、ミツルと風ちゃんが待っているところへ行った。



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2006/1/26 UP