第7話


「おい!何だよ昨日のは!」

翌日学校に行くと、朝っぱらからカズくんが突っかかってきた。

「何って何?」
「だから――っ、昨日、ベヒーモスんトコにいただろ!?」
「あぁ・・・。だって私、関係者だもん。ベヒーモスには入ってないけど」
「・・・関係者?どういうことだ?」

不思議そうに私を見るカズくん。

「カズくん・・・気づいてなかったの?」
「・・・何をだよ」
「問題です。私の名字は何でしょう」
「え、宇堂だろ・・・って・・・え?宇堂?」
「そう、ベヒーモスの宇堂アキラの妹です」
「はぁっ!?」

今の今まで気づかなかったのね・・・
この分だと、咢以外は知らないんだろうなぁ。面倒くさいから説明なんてしないけど。

「昨日も言ったけど――余程の練習をしない限り、超獣には勝てないと思った方がいいと思うよ」
「分かってる・・・今日の夜から、特訓するつもりなんだ」
「そっか。頑張ってね」
「・・・応援はしないんじゃなかったのかよ」
「うん、気が変わった」

にっこりと笑うと、カズくんは複雑そうにして、そっぽを向いてしまった。 咢は咢で何だかいつも異常に機嫌が悪い。 ・・・ただの寝不足かな。 昨日は遅くまで走ってたみたいだからなぁ。 何か思うところでもあるんだろうけど。


――何よりも、アキラとの戦いだし、ね。

いわば、因縁。





学校が終わってから、私は速攻で家に帰って、クローゼットの中から『戦闘服』と仮面を取り出した。

今日はチームのミーティングとかはないけれど、 私もそろそろ決意を固めなければいけないのかもしれない。

小烏丸と、ベヒーモスとのバトルは、エア・トレック界でも注目を浴びるだろう。 それに伴い、結果次第では進展があるに違いない。


そんなことをぼんやりと考えながら、服に袖を通す。
着物をイメージしたこの服は、特殊な構造になっていて、風通しもいいのに保温効果もある。 動きやすいのに、可愛いこの服は私のお気に入り。 『舞鬼』として走るときは、この服が私のトレードマークとなる。 緋色なのは、ヤマトが「鬼は血のような緋色が好き」と言ったから。 そして顔の半分ほどの大きさの、緋色に金の模様の仮面。 これは百鬼のグループリーダーお揃いのもの。 メンバーは緋色一色の仮面を着けている。 ヘルメットではなく仮面だから、百鬼のメンバーは結構目立ってるかもしれない。


緋色の、戦闘服。

そして緋色の仮面。





これを着ければ、私は鬼となる。





「さて、と」


いっちょ、舞いますか。





目から鼻までを仮面で覆い

振袖を靡かせて

帯に突っ込んだ扇を取り出し、広げ

ブーツ型のエア・トレックをダンッと地面に蹴りつけて

舞う、赤鬼。



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2006/4/11 UP