街外れの小さな家に、手紙を銜えたフクロウが停まった。
コツコツ、とフクロウが窓を叩くと、中から少女がやってきて、家の中にフクロウを迎えた。

「リーマス!ホグワーツから手紙が届いたよ。入学許可証ね…ちょっと遅いんじゃない?」
「あぁ、もうそんな時期か…。明日にでもダイアゴン横丁に行こうか」
「うん!」

フクロウフーズを数個食べて満足したフクロウは、勝手に窓から出て去ってしまった。












「えぇと…あと買ってないものは大鍋と薬瓶と杖?でも全部あるから買わなくてもいいよね?」
「一応杖も買ったほうがいいんじゃないかな。正確にはの杖ではないからね…
 大鍋も新しいものがいいと思うよ。何というか――あれは年季が入っているから」
「うーん…。じゃぁ先にオリバンダーの店に行ってくるね」
「じゃぁ私が他のものを買ってこようか」
「うん、じゃぁまた漏れ鍋で」

手を振ってリーマスと別れると、はオリバンダーの店に走っていった。

「オリバンダーさん!杖を買いに来ました!」
「おぉ、いらっしゃい。…おや?君は既に杖を持ってるようだが…」
「これは父さんの杖なんです。…形見みたいなもので」
「そうか、そうか。それは私が作ったものだな――確かシリウス・ブラックだったかな」
「はい、私の父です」
「では君が・ブラック――いや、だったか…」
そう言ってオリバンダーは店の奥に行き、杖の入った箱を取り出していく。
次々と試していくのだが全く決まらない。は弱音を吐いた。
「そろそろ疲れてきたんですけど…」
「がんばりたまえ。柊に一角獣のたてがみ、25cm。しなやかで手に馴染む」

振ると、杖先から柔らかな風が吹き、あたり一面を駆け上がって埃を払い、少し開いていたドアを勢いよく開けて出て行った。
オリバンダーはドアを閉めると優しく言った。

「包んでいる間そこの椅子に掛けていなさい」
「あ、はい。どうも」

ちょうどが椅子に座ろうとしていたとき、先ほど閉めたドアをバタン!と開けてリーマスが入ってきた。

…。遅いから何かあったんじゃないかと…」
「買い物ごときで何かあるわけないでしょー。心配性だよ」

「おぉ、リーマス・ルーピンか。懐かしいのぅ」
「お久しぶりです、オリバンダーさん」

リーマスとオリバンダーが喋っている間、は暇を持て余して父親の杖を振って遊んでいた。

「ウィンガーディアム――」
!」

ビクッとなり、はリーマスの方を振り向いた。

「外で魔法を使ってはいけないと言ったじゃないか」
「…忘れ――」
「忘れてたとは言わせないよ?君の場合は特に魔力が強いんだから。」

笑顔な分凄く怖い、とは思った。

「ごめん」
「分かればいいんだけれど」

「さて出来た。7ガリオンじゃよ」
「はーい。ありがとう、オリバンダーさん」

杖の入った袋を受け取り、はリーマスと二人で漏れ鍋に向かった。

「いいかい、未成年は学校の外では魔法を使っちゃいけないんだ。まだホグワーツに入っていないとはいえ」
「まぁ…以後気を付けます。とは言ってもすぐ学校だから意味ない気もするけどね」
「それから、学校では動物もどきだということを隠しておかなければいけないよ。本当は申請しなければいけないんだから」
「大丈夫だって。ホグワーツでは狼に変身する誰かさんもいないし」
「はぁ…大丈夫だろうか…」

リーマスが深いため息を付くとはにっこりと笑った。



二人は漏れ鍋に着いてから暖炉を使って家に帰り、リーマスは夕食の準備、は新学期の用意に励んだ。

「フクロウ1匹連れてってもいい?」
「じゃぁホークスを連れて行くといい。大人しいしに懐いてる」
「はーい。…セブルスに会うのが楽しみだなぁ」
終始笑顔で準備をするを見て、リーマスは悲しげに微笑んだ。












とうとう出発の日がやってきた。

今まで10年間、ほぼ毎日一緒にいたリーマスと一緒に暮らせないのは寂しかったが、
ホグワーツの憧れが強く、出発の日を指折り数えて楽しみにしていた。


、準備はできたかい?」

「うん!」


首だけひょっこりとドアのすきまから出すリーマスに満面の笑みで答える




大きい荷物はリーマスが持ち、は小さい鞄だけ持って暖炉に向いた。
そしていつも通り、煙突飛行粉を取り出して大きな声で「ダイアゴン横丁!」と言って、緑色の炎の中に入った。
一瞬の後に漏れ鍋につき、少し遅れてリーマスもやってきた。
二人は漏れ鍋の主人のトムに挨拶をしてからキングズ・クロス駅に向かった。

漏れ鍋を出てからはリーマスの小言ばかりだった。
「いいかい、学校で無茶をしてはいけないよ」
「うん」
「何か困ったことがあったら私に手紙をよこすか、セブルスを頼るといい」
「うん」
「それから―――」
「大丈夫だって。そんなに心配しなくても」
は誰に似たんだか、無茶をする性格だからね――心配の種は尽きないよ」
「多分お父さん譲りだと思うけど――週に1度くらい手紙を書くわ、安心して」

『お父さん』と言ったところでリーマスが一瞬、無意識に顔を強張らせたのをは見逃さなかった。
父親代わりに育ててくれて、大好きなリーマスに心配をかけさせたくはないの一心で、
ホグワーツに入学するのはなのに、一生懸命リーマスを励ました。
「どの寮になるのかしら。リーマスはグリフィンドールだったんだよね?」
「そうだよ。君の大好きなセブルスはスリザリンだったけれどね」
「…セブルスがグリフィンドールだったらこの世の終わりかもしれないわ」
「…想像したくはないかもしれないね」
「グリフィンドールがいいなぁ。入れるかなぁ…」
「大丈夫だよ、きっと。君のその性格なら」
「どういう意味かしら?」

ハハハ、と面白そうに笑うリーマス。
あぁやっと笑ってもらえた。
リーマスの悲しげな微笑みはあまり好きではなかった。
何かを無理に我慢しているような、堪えているような、そんな笑い方。
いつも苦労をかけている分、この人に幸せを分けてあげたら、と幼いながらに思っていた。





「あぁ、。ここだよ」
「え?ここ?」


駅のホームの、壁。
マグル避けとはいっても壁につっこみむのはやや抵抗があって当然だった。
大丈夫だよ、とリーマスが少し背中を押して、は覚悟を決めて、壁の中に入っていった。






魔法使いたちでごったがいしているホームに、とリーマスは立っていた。

「じゃぁ見送りはここまでだ」
「ありがとう、リーマス」
「ホグワーツで頑張るんだよ」
「クリスマスには帰るからね」
「元気で」
「リーマスも!」


はリーマスと言葉を交わし、ハグをして汽車の中に入った。
周りを見渡すと、コンパートメントの中で既にグループができているようだった。

「ホークス、私に友達はできるかなぁ?」

肩に留まっているホークスに話しかけると、フクロウは気難しげにホー、と鳴いた。



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2005/12/11 UP  --2006/2/1 修正