「イッチ年生!イッチ年生はこっちだ!」


小さな魔法使いの卵たちに向かって叫ぶ大男。
髪の毛も髭もぼうぼうで、顔が埋もれているようだった。
リーは他にも友達を作ったようで、はフレッドとジョージと共に、ハグリッドにくっついて歩き出した。


「あれがハグリッドか!」
「フレッド、知ってるの?」
「兄貴から聞いたのさ」
「そう言えば、列車の中で『あと2人もいる』って言ってたけれど、お兄さんもホグワーツ生なのね」
「7年生に1人、3年生に1人いるんだけど――」
「――僕たちは7人兄弟なんだ」
「7人!?」
「「そうさ!」」
「随分兄弟が多いのね…。私は一人っ子だから」
「ビルはもう卒業したけど、7年生のチャーリーに3年生のパーシー」
「2個下に弟のロン、3個下に妹のジニーがいる」
「「もちろんみんな赤毛だからすぐに分かるさ!」」
「兄弟が多いのは羨ましいなぁ…。私は2人暮らしだし」
「「二人暮らしなのかい??」」
「えぇ。お母さんは死んじゃって、お父さんは――一緒に住んでないから。育ての親と暮らしてたの」
「そうなんだ…。兄貴たちも紹介するよ。きっと楽しいに違いない!」
「それに休暇のときにでも遊びにおいで」
「うん、ありがとう」


しばらく歩いていくと、急に道が開け、大きな湖のほとりに出た。
みんなが揃うと、ハグリッドは何人いるかを数え、4人ずつボートに乗るように指示を出した。
ハグリッドの誘導でボートに乗り、大きな「進め!」の声でホグワーツに向かってボートが動き出すと、フレッドとジョージが二人そろって「すげぇ!」と声を漏らした。
暗い闇に浮かびあがるホグワーツはとても幻想的で、は思わず感嘆のため息を漏らした。

大分かかって反対側の岸に着き、一斉にボートから出ると、来たときと同じようにハグリッドが子供たちの頭数を数えた。
そして先ほどの数と同じことを確認すると、満足げに頷いた。


「――みんな、いるな?中に入るぞ!」


ハグリッドはそう言うと、城の扉を3回叩いた。







城の扉が開いて、中から厳格そうな魔女が現れた。

「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです」
「ご苦労様です。ここからは私が預かります」

マクゴナガルがみんなに付いてくるように指示し、たちは小さな空き部屋の中に入った。

「ホグワーツ入学おめでとう。 ――新入生の歓迎会がもうすぐ始まりますが、大広間の席に着く前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。 寮の組み分けはとても大事な儀式です。ホグワーツにいる間、寮生が学校での皆さんの家族のようなものです。 教室でも寮生と一緒に勉強し、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります――」

それから寮についての簡単な説明を受けたが、大体はリーマスやスネイプから聞いたものと同じようなものだった。
そして、静かに待っているように、と言うと部屋を出て行った。

「ひゃー、厳しそうな先生だな」
「そうね…でも良さそうな先生だわ。寮を決めるのってどうやるのかな?」
「チャーリーの話じゃぁ先生と一対一で面談がある」
「パーシーの話だと、勝手に決めてくれるらしい」
「どっちかって言えば……面談は嫌ね」
「パーシーは馬鹿正直だから多分パーシーの言ってることが正しいと思うぜ」
「でも勝手に決めるって――何を基準に決めるのかしら…」

悩んでいたところで、また部屋の中にマクゴナガルが入ってきた。





「準備が出来ました。組み分け儀式がまもなく始まります。さぁ行きますよ」





この時ばかりは、どの生徒の顔も緊張で強張っていた。
は心の中で『きっと大丈夫、上手くいく』と自分を励まし続けた。
せめてどんな儀式なのか前もって教えてくれてたらこんなに緊張しなかったのに――とこの場にいないリーマスとスネイプを呪い、大広間へと歩き出した。






一列になってマクゴナガルに付いていく。
大広間に入ると、両側に2列ずつ長いテーブルがあり、上級生達がじっと新入生達を見ながら座っていた。 空中には無数のろうそくが浮かんでいる。 奥には教員たちが座っていて、はそこにスネイプの姿を見つけると、スネイプに向かって微笑んだ。 スネイプがこちらを見て軽く頷いたのが見えたが、前を歩いていたジョージがいきなり止まったので、は危うくぶつかってしまうところだった。


「ジョージ、いきなり止まらないでよ」
「見ろよ、。真ん中に古い帽子があるぜ。何に使うんだろう」


すると、帽子はいきなり歌い始め、フレッドとジョージ、は呆気に取られてしまった。
帽子がひとしきり歌い終えると、大広間は拍手でいっぱいになった。


「まさか、これで組み分けをするのかな」
「そうなんだろうね…」


マクゴナガルが長い羊皮紙を手に進み出ると、は緊張で震えてきた。




「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組み分けを受けてください――アリスティナ・オニキス!」
最初に呼ばれたのは女の子だった。
一瞬の沈黙のあとに、帽子が「レイブンクロー!」と叫ぶと、左端から二番目のテーブルから大きな拍手が上がった。

「俺たちはウィーズリー…『W』だから、呼ばれるのは最後の方だな」

フレッドが呟いたが、にはそれの言葉に返事をする余裕がなかった。
――どの寮になるのかしら。選ばれなかったらどうしよう…
あぁ、きっと次だわ、と思うと、マクゴナガルの口から自分の名前が飛び出した。

!」

「「大丈夫だ、がんばって!」」
「ありがとう」

小声の双子のウィーズリーの応援で、何とか椅子に向かって歩いていけた。
よたよたと歩いていると視界にスネイプが入った。心配そうに見つめている――



帽子をかぶると、頭の中で声がした。
「――おお!才能に溢れている――魔力も強いし…勇気もあるが、狡猾さも兼ね備えている。むむ、どこの寮に入れたものか…」
は自分の組み分けに掛かる時間が随分長いように感じた。
実際双子のウィーズリーは心配そうにの方を見ていた。

「――よし、グリフィンドール!!


帽子の大きな声にビクッとなると、は帽子を外して拍手が起きているグリフィンドールのテーブルに向かって駆け出した。
決まってよかった、しかもリーマスと同じ寮だ!
は長いすに座ると、ほっとため息を付いた。
スネイプの微かに眉間に皺が寄った機嫌の悪そうな顔が見えたが、気づかない振りをして残りの組み分けに注目した。
セブルスのことだ、きっとスリザリンに入れたかったに違いない。
せっかく仲良くなれたのだから、フレッドとジョージもグリフィンドールならいいな――と考えていたところで、のあとに呼ばれた女の子もグリフィンドールに決まった。


「ウィーズリー・フレッド!」


フレッドが呼ばれた。
フレッドが椅子に座って数秒すると、帽子は「グリフィンドール!」と叫んだ。
の方に向かって走ってくる。

「フレッド!同じ寮ね――」
「うん、良かった。きっとジョージもグリフィンドールさ」


「ウィーズリー・ジョージ!」


先ほどのフレッドと寸分の狂いもなく同じ動作で椅子に座る。
まるでデジャヴだ――そして帽子も同じ言葉を叫んだ。「グリフィンドール!」


「ジョージ!」
「フレッド、、同じ寮だな。良かったよ」
「僕とジョージが別の寮だったら笑いものさ」



「フレッド、ジョージ!」



と双子が喋っていると、向かい側の席から2人の赤毛の上級生が双子に声を掛けてきた。

「2人ともよくやった――これで今のところ兄弟全員がグリフィンドールだ」





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2005/12/18 UP  --2006/2/1 修正