「へくしゅっ!」 前日にちゃんと布団をかけないまま寝てしまった所為か、は朝から風邪気味だった。 「、医務室に行ったほうがいいんじゃないかい?」 「それに一時間目は魔法史だ!つまらないと専らの噂だよ」 「でもたくさん進んだら付いていけなくなるかも…」 がフレッドとジョージと大広間で朝食を取っていると、マクゴナガル先生が時間割を配り始めた。 今日の1時間目が魔法史だと知り、双子のウィーズリーは顔をしかめた。 「ノートならあとで写させてあげるよ!」 「…いいの?じゃぁ行って来る…」 鼻を啜りながらよたよたと歩くを横目で見ながらフレッドはため息をついた。 「見てみろよ、ジョージ」 「あぁ、最悪だな」 「「今日は魔法薬学がある…」」 医務室に着いたはマダム・ポンフリーに風邪薬を貰うと、念のために1時間は休みなさい、と言ってまた自分の仕事に戻っていった。 最初の授業から欠席なんて――とは落ち込んでいたが、授業を受けていたフレッドとジョージは医務室で休んでいるを羨ましく思った。 そして1時間が過ぎ、が調子を戻したところでマダム・ポンフリーは「あともう1時間!」とをベッドに戻してしまったのだった。 結局魔法史と、闇の魔術に対する防衛術に出ることができなく、夜はしっかり勉強しよう、と心に決めた。 がやっと授業に出る許可をもらったのは午後になってからだった。 この日の午後の授業は魔法薬学では医務室で昼食を食べてから教科書をとりに急いで寮に戻った。 寮を出る頃には授業が始まる5分前で、は全速力で走らなければならなかった。 もし事前に地下牢の場所を確認しておかなかったなら、大幅に遅刻してしまったことだろう。 昼食を消化しきれていないまま走ったのでせっかく休んだのにお腹が痛くなってきてしまった。 スネイプが授業開始の合図とともに、威勢のいい音を立てて教室に入る。 ひとりでに閉じたドアを一瞥し、スリザリンから出欠をとっていく。 グリフィンドールの出欠を取り始めたところで、一人の生徒がいないことに気づいた。 「――ミス・はいないのかね?」 「「は医務室にいます」」 「すみません、遅れました!!」 地下牢の扉をバタンと音を立てて開け、勢いよく中に入ると微かにスネイプが目を見開いた。 「ミス・は辛うじて我輩の授業を受ける気力が残っていたらしいな。早く座りたまえ」 「はい、すみません」 は心持ち駆け足で双子のウィーズリーの隣に座った。 目だけを動かして周りを見ると、どうやらスリザリンとの合同授業のようだ。 フレッドとジョージはこの遅刻に減点がされなかったことに驚いた。 チャーリーが前にスネイプが教室に入ったあとに入ったら、5点も減点されたという話を聞いていたからだ。 2人が吃驚したままを見ていると、スネイプが矛先を双子に向けた。 「ウィーズリー!君らが注目するべきはではなく我輩だと思うのだが違うのかね? 余所見をする余裕があるのならば我輩の質問に答えたまえ。ミスター・フレッド・ウィーズリー、――『生ける屍の水薬』の材料は?」 何の水薬だって? フレッドもジョージも、教科書をパラパラとしか読んでいなかったし、第一そんなものが載っているのかさえも分からなかった。 「分からないなら分からないと言いたまえ」 「分かりません」 「君は勉強好きな兄どもに勉強を教わったことはないのかね? ミスター・ジョージ・ウィーズリー、ベゾアール石はどこにある?」 「分かりません」 即答したジョージにスリザリンの生徒の何人かがくすくすと笑った。 レイが睨みつけると、今度は「ミス・」と猫なで声でスネイプが矛先をに向けた。 「ミスター・ウィーズリーの代わりに答えたまえ」 スネイプの変わり様に呆れて声も出せないでいると、スネイプは「君も分からないのかね?」と口角を上げてニヤリと笑いながら言ってきた。 「…―『生ける屍の水薬』の材料はアスフォデルの球根の粉末に煎じたニガヨモギです。 眠り薬ですが、あまりに強力なため『生ける屍の水薬』という名前が付きました。 ベゾアール石は山羊の胃の中にあります。代表的な解毒剤の材料です」 くすくすという笑い声が聞こえなくなり、教室がシーンとなった。 「よろしい。…ではとりかぶとの別称はなんだね?」 「ウルフスベーン、モンクスフード、アコナイト。以上です」 「マンドレイクで作れる代表的な薬は何か?」 「石化されたものを蘇生させる薬が作れます――でも1年生の習う範囲ではないと思うのですが」 「我輩のすることに首を突っ込まんでよろしい。 ミス・の十分な予習に対し、グリフィンドールに5点。諸君、何故ノートに書き取らんのかね?」 双子のウィーズリーは小声で「すごいや!」と言うと一生懸命ノートに書き取るふりをした。 は、セブルスに貰った本を覚えるまで読んでおいてよかった――と軽くため息をついた。 その後、スネイプは簡単な薬を調合すると言って、2人一組にさせ、は一人余ってしまったので仕方なく双子と3人で組むことにした。 が材料を準備しフレッドが鍋に入れてジョージがかき混ぜるという流れ作業にしたが、 フレッドは、が「入れていいよ」と言う前にポンポンと鍋に入れていくし、 ジョージは勢いよくかき混ぜるため、はこの順番にしたことを後悔した。 ジュッ 「イタッ!」 「!?」 ジョージがかき混ぜた鍋の中身が飛び散ってのローブを焦がし、腕に火傷をした。 「ちょっと火傷しただけ。大丈夫よ。 ――フレッド、山嵐の針はまだ入れちゃだめ!ジョージ、もう少しゆっくりかき混ぜて」 何とか作り終えると提出する瓶に入れて鍋を片付けた。 「、ごめん」 「大丈夫だって言ってるでしょ。気にしないで」 そこでようやく授業の終わりを告げる鐘が鳴ると、グリフィンドール生は我先にと地下牢を飛び出した。 「ミス・は残りたまえ」 急に呼び出されて戸惑いの表情を浮かべるにフレッドは「何かしたのかい?」と聞いた。 「とりあえず先に戻ってて。図書室に行きたいから夕飯でね」 「分かった!」 「健闘を祈る!」 双子が駆け出していくのを見て、はスネイプに近寄った。 するとスネイプはに背を向けて研究室のドアを開いた。 「入りたまえ」 next 2005/12/23 UP --2006/2/1 修正 |