04.屋上=あいつが居る

「お待たせー!」
「遅い」

お昼休み、私は授業中の約束どおり、セブルスに会うべく図書館にやってきた。
セブルスを探し出して声を掛けると、返事がすぐ返ってきた。
っていうかまさかこんなに早くいると思わないし。
セブルスって律儀なんだね。

「いやぁ、図書館のどこで待ち合わせるか決めておくべきだったね!
 まさか図書館でも魔法薬学のところにいるとは思わなかったよ」
「悪いか」
「滅相もない」


「で、グリフィンドール生のお前が、僕に何の用だ」


何だかセブルスは機嫌が悪い。
あぁ、機嫌が悪いのはいつものことか。

「昨日のお詫びをしようと思って。さぁ行くよ!」

慌てて杖を振って本を片付けるセブルスの左腕を引っ張って、図書館を出た。
駆け足に近かった所為か、マダム・ピンスの睨むような視線を感じた。




図書館を出て右に曲がって、廊下をまっすぐ。
行き当たりにあるタペストリーを裏返して、杖で3回叩く。

「何だ、ここは」
「行ってのお楽しみー」

すると、壁の煉瓦が人が一人通れるほどの大きさの穴を作った。
私がセブルスを先に通そうとすると、彼は少し戸惑ったようだったが、私が背中を押すと素直に入った。

「階段上がって!」

セブルスを急かして、上に続く階段を上がる。
出た先は、城のてっぺん。
図書室の屋根裏みたいなこの場所が私のお気に入り。

私の秘密の場所であるここは、ガラスの付いていない出窓がふたつあって、穏やかな風が通る快適な場所。
しかも、窓から身を乗り出すと、ホグワーツの敷地が見渡せる。
狭くもないから、変身術の練習をしたり、勉強したり、読書をしたり。

あの悪戯仕掛人たちでさえも知らない場所。





「すごいな、ここは…」

きっと学校生活を真面目に過ごしている彼は、今まで隠し部屋を探したことはないだろうから、
初めてこういう場所に入ったんだと思う。
普段きりっとしている彼の唖然としている表情を初めて見て、あぁここに連れてきてよかったな、と思った。

そして、私とセブルスは、窓の近くの壁に寄りかかって、お互いに微妙な距離をとって座った。
セブルスは出窓に肘をついてた。視線が合う。微妙な沈黙。

「3年生の頃から、暇なときはここに来てぼーっとしてるの。落ち着くでしょ?」
「僕もここを使ってもいいのか?」
「もちろん!」
「そうか・・・」
「ジェームズたちも知らないの、この場所。暇さえあればここにいるから、会いに来てねー」
「何で僕がに会いに来なければいけないんだ」
「え?来てくれないの?
 っていうかって呼んでって言ったじゃん!」


そのあと、私たちは部屋の中が薄暗くなるまで喋り続けた。
主に魔法薬学のことばかりだったけれど。それでも楽しかった。


「あー……じゃなくて、。教えてくれてありがとう」

やっとセブルスにファーストネームで呼んでもらえたとき、不覚にもドキッとしてしまった私がいた。





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2006/1/16 UP