07.何故か全力疾走する僕ら

5月のある日、一週間ぶりに彼を見た。

「セブルス!おはよう!」

快活に挨拶をした私に、返ってきた返答は、なかった。
何コレ、何か私したっけ?それともジェームズたちの悪戯のやっかみが私に!?
っていうか、虚しいじゃん…この上げた手のやり場は…

「何で無視するかなぁ…待ってよ!」

私はゆっくりと降ろした自分の手を見つめ、十数メートルほどを先に行くセブルスを全力疾走で追いかけた。
すると、セブルスは足音で追いかけられているのを気づいたらしく、…逃げやがった。

「チッ・・・」

セブルスは舌打ちをして、上の階へと上がっていった。
逃げられるものか!逃がすものか!
もう半ばヤケだ。
無言で全力疾走する私たち。周りの生徒が引いていたけど気にしない。



その後私たちは散々追いかけっこをしたけれど、捕まえることはできなく、最終的に動く階段に阻まれてしまった。
もう授業が始まってしまっている。
仕方なく私は、例の隠し部屋で1時間を過ごす事にした。

「え・・・?」
「なっ・・・」

思わず固まってしまった。
何でここにセブルスがいるの?

「セブルスもサボり?」
「お前のせいだ」
「セブルスなら遅刻してでも行くと思った」
「魔法薬学だったらそうしたろうな」

出窓に腰掛けてるセブルスの近くに向かい合うように床に座った。

「何で僕なんかに声を掛けるんだ」
「・・・どうしてそんなこと聞くの?っていうか、そう!何で無視するの!?」
「・・・・・・」

セブルスが黙ってしまった。
悪戯関連ではなさそうね。

「先日、ルシウスからお前のことについて聞かれた」
「ルシウス…?あぁ、7年生のマルフォイね」
「・・・卒業後、僕は死喰い人になることになった。いや・・・これは前から決まっていたようなものだったが。
 それに、ならなければ、僕の大事な人が死ぬだろう、と」


ねぇ、何でそんな悲しそうな眼をするの?
セブルスは下に向けていた視線を私に移し、言葉を続けた。
ねぇ「大事な人」って、私のこと?
自惚れてもいいの?


「お前は騎士団に入るのだろう。だから僕に一緒にいてはいけない」
「私、騎士団には入らないよ」
「・・・は?・・・お前、グリフィンドールだろう?」
「グリフィンドールの子がみんな騎士団に入るわけじゃないもの。
 ジェームズやシリウスたちは入るだろうけど。
 私はね、卒業したら、家の温室で育てた薬草を売って、薬問屋をしようと思うの。
 純血だからダンブルドアの陣営でない限り狙われないだろうし、私は殺されない」

そこで私は一息ついて、セブルスから視線を外した。

「セブルス・・・そんな表情しないでよ。
 私はジェームズたちと違って、闇も許容するべきだと思ってるの。
 確かに例のあの人はやりすぎだわ。でも、死喰い人まで憎むべきではないと思うの。
 死喰い人を恨んでいる人がいたら、それはお門違いよ。もちろん過激派はどうかと思うけれどね。
 例えば・・・殺人鬼がナイフで人を殺す。
 この場合殺人鬼は・・・例のあの人、ナイフは死喰い人ね。
 殺人鬼に殺されたからと言って、ナイフは使われただけだもの。ナイフを憎む人はいないでしょ?
 こういう考えもあるってこと。死喰い人も憎まれるだけの道じゃないわ。
 それに・・・私は、セブルスと一緒にいる。いたいの」
・・・」


「ねぇ、セブルス?
 私、セブルスのこと好きだよ」


手を伸ばして、セブルスの頬に触れた。
セブルスは一瞬、ビクッとしたあとに、軽く微笑んだ。


「僕も、好きだ。





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2006/1/20 UP
微シリアス。