08.放課後のプールサイド

が授業に欠席していた。風邪でも引いたのだろうか。
授業の帰りに医務室によってみたところマダム・ポンフリーしかいなく、「怪我でもしたのですか?」と聞かれた。
僕は謝ってから慌てて出て、がいるかどうかを確認しに図書館に行ったが、そこにもいなかった。
そしてあの場所に行って、窓から外を見回すと、湖の端にが俯きながら座っているのを見つけて、急いで階段を降りた。

なんで外にいるんだ。
このサボり魔め。
と、心の中で悪態を着きながら駆け寄ると、は裸足で湖に足を浸からせながら本を読んでいた。

「何してるんだ・・・」
「・・・セブルスこそ」
「授業はもう終わった」

医務室にでもいるのだと思っていた。
そう言うと、は本に向けていた視線を、ハグリッドの小屋に向けた。

「もう終わったんだ。あぁ、マクゴナガル先生怒ってるかな」
「先生も医務室だと思ってるだろう。で、お前は何をしてるんだ」
「見ての通り、本を読みつつ湖に浸かってるだけですよー」
「大イカに足を掬われても知らんぞ」
「大丈夫だって。多分」
「学年末まであと1週間ほどだというのに、随分と余裕だな」
「息抜きだって。息抜き」

減らず口を・・・
呆れた僕は、の隣に腰を下ろした。

両思い・・・になってから早1ヶ月。
僕とは、あまり目立たぬように付き合ってきた。
いくらがああ主張しようとも、ルシウスを初めとしたスリザリン生に目を付けられることは避けたい。
これはの身を守るためでもある。

周りを見渡すと、テストが近いせいか、誰一人として湖の近くにいる生徒はいなかった。
を見つめるが、当の本人は、手に持った本に熱心に食い入っている。
こいつの中で僕は本よりも下位にいるのだろうか。
ふと疑問に思った。


「なーに?セブルス」
「もうすぐ夏休みだな」
「そうね」
「家に帰っても、僕の家はしもべ妖精しかいないんだ」
「私の家と同じね」
「だから、夏休みが始まったら、の家に行ってもいいか?」

がぱっと顔を上げた。
僕が見つめていると、が恐る恐るといった感じで口を開いた。

「来てくれるの?」
「・・・随分前に約束しただろう。の育てたセシェネが見たい」

僕がそう言うと、はがばっと僕に抱きついた。
いきなりすぎて反動を殺せずに、地面に転がる。
あぁ、地面に草が生えててよかった、と心底思った。
前に同じように例の部屋で抱きつかれたときには、したたかに頭を打ち付けてしまった。
こうやって勢い余って押し倒されるのも、もう慣れてしまった。
慣れとは恐ろしいものだ。
もし周りに人がいたら注目されること間違いないけれど、こういうのも悪くない、と思う。

「もう忘れられてるかと思った・・・」
「忘れるわけないだろう」

ぽんぽん、と背中を軽く叩くようにしてやると、は僕の胸にくっつけていた顔を上げて、笑った。





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2006/1/20 UP