「それで、どういった理由でこんな時間に寮を抜け出したのですかな?」


は2階の隠し部屋を探していたところをスネイプに見つかり、部屋に連れてこられていた。 スネイプの研究室は地下室なので昼も夜も大して変わらない。 けれどは何故だか、薄暗い部屋で小さな明かりを反射するホルマリンの瓶たちが 無言の主張をしていたように思った。 は他の女の子たちよりはホルマリン漬けに対する耐性はあるつもりだったけれど、 流石のでも、夜に見るのはやっぱり気持ちが悪かった。

「えぇと・・・」
「ほう?ウィーズリーたちに唆されたと?」
「何も言ってないじゃん!」

スネイプにが突っかかると、スネイプは猫なで声を出した。

「では何をしていたのか言ってみなさい。言えば減点はしないでおいてやろう。 もちろん罰則はするがな」

(――完璧子供扱いだ・・・)
は内心毒付きながら、どう言い繕えばいいか必死で考えた。

「具合が悪くて、フ、フレッドとジョージと、医務室に行くつもりで・・・」
「ではなぜあそこに留まっていたのかね?」
「うっ・・・」
「正直に吐いた方が身の為だ。

(吐いた方がって・・・私脅されてる・・・!?・・・脅されてる!!)

は、いい案は思いつかないし (今まで何度も誤魔化したことはあるが、ことごとく見破られた経歴を持つ) スネイプには睨まれているし、は蛇に睨まれた蛙そのもののようになっていた。
スネイプは左眉を極限まで上げ、いつもの眉間の皺を二割増にさせてのことを見つめている。 その視線があまりにも痛くて、は両手を挙げて降参のポーズをした。

「・・・・・・白状します。・・・白状するから睨まないで! ホグワーツの隠し部屋を探すために、怪しそうな壁とか絵画とかを調べてたの。 昼間だとみんなの目があるでしょ?だから夜に抜け出したの」

が一息で言うと、スネイプは腕を組み、額に手を当ててため息を吐いた。

「類は友を呼ぶとはよく言ったものだ・・・。何分遺伝もあるから性質が悪い」

はそれから数分の間、スネイプの愚痴のようなものを聞かされ、 その後に、夜中に寮から抜け出さないことをきつく言い聞かされた。

はスネイプには絶対に忍びの地図のことを言ってはいけないと思い、口には出さなかった。 新しい突っかかりの種を自分から蒔くのは得策ではない。 ただでさえあまり――スネイプの一方的な感情ではあるけれど―― リーマスとセブルスは仲が良くないのに。

「今日はもう寝なさい。明日マクゴナガル教授に言おう」
「・・・はーい」
「多分あのお方のことだから、罰則はのみ、そして内容は我輩の決定するところになるだろう」

それを聞いて、は心なしか安心した。

自分で言うのもあれだが、この名付け親は自分に対して、すごく厳しいわけじゃない。 ・・・多少は厳しいけれど。 セブルスの罰則なら、薬品棚の掃除だとか、薬草の採取の手伝いだとか、 教室の掃除だとか、おおよその想像は付く。

「そう言えば・・・。今の部屋は一人部屋だそうだな?」
「そうだけど、どうしたの?」
「ダンブルドアが言うには・・・の体質に考慮して、ということらしい。 隠し扉は我輩の自室に繋がっているらしいから、何かあったら使いなさい」

が頷くのを確認すると、 スネイプはそれに続けて「初めから言ってくれればいいものを・・・」と、 小さい声でダンブルドアへの文句を連ねていた。

「・・・隠し扉ってどの辺にあるのかしら・・・探せば分かるかな」
「そんなに入り組んだところには作らないだろう。使う本人が分かっていなければ意味がない」
「じゃあセブルスのところに遊びに行きやすくなるね」
「・・・いいから寝なさい」
「はーい」

帰ったらフレッドとジョージに何をしてやろうかと悩みながら、 はスネイプの研究室を後にした。





「「!」」
「大丈夫だったかい?」
「スネイプに何もされなかった?」
「あなた達に言われたくないわ!セブルスを見た途端に逃げ出したくせに」

が口を尖らせて言うと、フレッドとジョージは顔を見合わせて頬を掻きながら苦笑いをした。

「だってゴーストかと思ったんだよ」
「それにいきなり出てきたし」
「「あれがスネイプだったとはね」」



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2006/3/15 UP