「・・・あなた、誰?」 あかねは驚きで声が出せないまま、桜は嬉しさがこみ上げて固まったままで、 はどうすればいいのか分からなくなった。 「桜さん、目を覚ましましたよ!」 「ええ・・・!!本当に・・・。さま、お体のほうは・・・」 「うーん・・・ちょっとだるいかしら」 「仕方がありませんわ。5日もお眠りになったままだったのですから」 「5日!?」 は心の中で、自分の力を持っていった四神たちを呪った。 「えぇと、あなたは龍神の神子、ね。力を回復してくれてありがとう。私は――いえ、藤原」 「元宮あかねです!よろしく!」 「あかねちゃんね。早速だけど私は帰らなくちゃ。桜さん、行きましょう」 「お休みになられなくてもよろしいのですか?」 「もう十分休ませて貰ったわ」 「でも起きたばかりですわ。それに鷹通さまがお見舞いにいらっしゃるかもしれませんし」 「そうだよ、もう少しゆっくりしていくといい。四神の神子殿」 「友雅さん!」 「・・・橘少将殿、ですか」 「おや、私の名前を知っているのかい?鷹通から聞いたのかな」 「ええ。京で一番の色男だと」 「さま!」 「ふふ、冗談よ。母上も待っていることでしょうし、私はお暇させていただくわ。後ほどお礼に参ります」 は立ち上がり、扉に寄りかかっている友雅の前を素通りし、屋敷を出るべく門の方向へ歩いていく。 そして門を出たところで、は力が抜けていくのを感じ、ふらついた。 「やはり戻るべきです。さま、奥様へは連絡しておきますゆえ、ここでお休みになってください」 「・・・・・・」 その後泰明が来て、は当分の間屋敷から出られないことを告げられ、は半ば塞ぎこむようにして再び眠りについた。 翌日目を覚ますと既に日は傾いていて、隣の部屋から藤姫とあかねの話し声が聞こえ、は起き上がった。 「どうしたの?」 「さま、おはようございます。先ほど帝からの使者が参られまして。」 「そうなの」 「じゃぁちゃん、行ってくるね!帰ってきたらお話しようね」 「ええ。ここで待っているわ」 「大丈夫かしら・・・」 駆け足で去っていくあかねの背を見つめ、は呟いた。 は屋敷の中で早速暇を持て余していた。 十二単ほどではないにしろ、小袿もなかなかに動き難い。 供がいればまだ平気なのだろうが、この屋敷から出ることも叶わない。 「この屋敷は、神気に溢れてるのね・・・」 何となく、藤原の屋敷よりも居心地が良い。 陽の『気』が留まっているからなのだろうか。 久しぶりに気分がいい。 こんな気分のときは何か楽器を弾きたくなる。 ああ、今度鷹通に頼んで楽器を貸してもらおう。 2006/4/6 UP |