ー!帰ってるかー!」
「おいバカイッキ!今の部屋は立ち入り禁止だ!」
「は?何だよソレ」

ずかずかと廊下を進むイッキ。 そしてイッキはバタン!と威勢のいい音を立てての部屋の内開きのドアをこじ開けた。 ドアからはぶらぶらと、掛けられていた鍵が虚しく垂れ下がっている。 バカ力のイッキには鍵など無意味だった。

イッキはの部屋を一望し、ベッドを見たところで固まった。
レイが先ほどの外人に抱かれながら自分の方を見ている。
しかも布団からはみ出ている部分から察するに、裸。イッキはフリーズした。



ドアが開けられる音と、鍵の壊れる音で、は飛び上がって起きた。 安眠を妨害するのは誰よ・・・とドアの方を見ると、イッキが自分の方を見ていて目が合った。

「Severus!Wake up!!」

固まっているイッキを横目で見つつ、はセブルスを起こそうとした。 けれどセブルスは、久しぶりの恋人のぬくもりに安心しているからか、 を抱きしめたままなかなか起きない。 仕方ないのでレイは、毛布を一枚引っ張って体を隠し、上着を探し出して羽織った。 ちゃんとジッパーを首のところまで閉めると、イッキに顔を向けた。

「イッキ君?いつまでそこにいるつもり?」

は、片眉を吊上がらせながらイッキに言ったけれど、イッキは固まったまま。 しかもセブルスもなかなか起きないため、強硬手段に出ることにした。 セブルスに覆いかぶさり大きく息を吸い込んでから、セブルスの鼻をつまんでキスをする。 すると、セブルスはがばっと跳ね起きた。

!殺す気か!』
『あら、起きなかったのはそっちの方じゃない。 愛する彼女のキスで目覚めるのがそんなに気に食わないとでも?』
『それにしたってやり方というものがあるだろうが!』
『いいから早く服着てよ。そこで子供が固まってる』

セブルスはイッキを見て一瞬険しい表情をしたけれど、いそいそと服を着だした。





密かに想いを寄せていた同居人に、裸でベッドに寝ているシーンとキスシーンを不可抗力ながらも 連続で見せ付けられたイッキは、なかなか自分の世界から帰ってこなかった。 は蜜柑を呼んでイッキを追い出してもらい、 セブルスを待たせてダンブルドアに一筆書くことにした。


ダンブルドア先生へ

遣いにセブルスを寄越してくれたことに感謝します。
話は大体聞きました。
心の準備も含めて――準備が出来次第、そちらに向かいたいと思います。

実家の方に事情を説明したら、喜んで送り出してくれることでしょう。
それと――同居人のマグルに、事情を説明する許可をいただきたいのですが・・・。

短期間で構いませんので、セブルスを貸してください。期間はお任せします。
それに伴い、翻訳キャンデーを何日か分準備していただけますか?
お手数掛けて申し訳ないです。
新学期までには全てを間に合わせますのでご心配なく。



『お待たせ』
『では一回ホグワーツに戻ってくる。2,3時間ほどでまたこちらに戻ってくる。 「姿現し」する場所はここでいいな?』
『ええ。何かあったら連絡して』
『――、渡すものがある』
『ん、何?』
『ダンブルドアから預けられた。・・・合わせ鏡だ。片方は我輩が持っている』
『・・・ありがとう。いってらっしゃい、気をつけて』
『ああ』


セブルスは、ジャケットのポケットに手を突っ込み、「姿くらまし」した。





セブルスが「姿くらまし」したあと、はしばらくぼーっとしていた。 久しぶりの情交に、体がだるかったのもあったけれど、 は許可を取ったところでどうやってイッキたちに説明するかを考えていた。 実際に魔法を見せてやるのが一番いいのだろうか――。

1時間ほどのんびりしたところで、下の様子を見に行くことにした。
Tシャツを着て、ハーフパンツを履き、部屋を出た。



「蜜柑、さっきはごめんね」
「あー?別に構わないさ」

身支度を整えて下に下りると、イッキがテーブルに突っ伏しながら寝ていて、 蜜柑はテレビゲームをやっていた。

「あの男は?」
「帰ったよー、結構前に」
「マジで?気づかなかったな」

だって玄関通ってないもの、とは心の中で呟いた。

「んで?マジで彼氏?アイツ」
「うん。そう」

があっさり肯定をすると、イッキががばっと顔を上げた。

「なんであんな年上の野郎と付き合ってるんだ!?」
「え、そんなに年離れてるように見えた?」
「どう見たってオッサンじゃねぇか!、別れた方がお前のために」

するとそのとき玄関の方から、バシッと言う音が聞こえた。

「何の音だ?」
「気にすることないわ」

訝る蜜柑とイッキにが言うと、襖がガタガタっと揺れた。二人の肩がびくっと揺れる。 はこれが「姿現し」「姿くらまし」特有の音だと知っているので、 襖の外の人物に声を掛けた。

『セブルス、その扉は押したり引いたりするんじゃなくて、横に押すの』

が少し大きめの声で言うと、セブルスが部屋の中に入ってきた。 だがさっきとは服装が違い、真っ黒のやたら長いローブを着ていた。 蜜柑とイッキは突然の訪問者に口を半開きにしながら呆然としている。 蜜柑が固まっている間に、ゲームのキャラクターが死んでゲームオーバーの画面になった。

『なんだこの扉は。理解しがたい』
『・・・隣に座って』
『・・・地べたに座るのか?』
『いいから!』

そしてセブルスを座らせると、は二人に向き直った。

「改めて紹介するわ。私の恋人の、セブルス・スネイプ。これから出入りすることになるかもしれないから、よろしくね」
「あ・・・あぁ・・・」

蜜柑がやっとのことで声を出すと、はまたセブルスと話し出した。

『随分早く済んだわね。ダンブルドア先生は?』
『ホグズミートに「姿現し」したら、既にダンブルドアが待っていてな・・・。 ダンブルドアは許可を出すと――今日はここに泊まることになるだろう。明日は日曜だからな。 それから、今回とは別に、2週間ほどこちらに留まることになる。翻訳キャンデーはとりあえず2個貰ってきた』
『相変わらず話が早い校長先生ね。じゃぁ今1個舐めて』

クスクスと笑うと、セブルスは怪訝な顔をしたが、ローブのポケットから飴を一個取り出した。 そして翻訳キャンデーを――しかもわざわざレモン味と書かれている――ひとつ、口の中に入れた。



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2006/2/7 UP