「どうだ、。ちゃんと反映されているか?」 「えぇ。バッチリ。私の言ってることも分かる?」 「あぁ、問題ない」 セブルスが翻訳キャンデーを舐めると、先ほどまで英語で理解不能だった言葉が、 イッキと蜜柑にも理解できるようになった。 ――実際は、セブルスの言葉が日本語に変換され、他の言葉が英語に変換されているのだけれど。 「あなたの英語の発音も綺麗だけど、日本語でも素敵ね」 「・・・そうか?」 「そこっ!二人だけの世界作ってんじゃねぇよ!つーかオマエ、何でいきなり日本語喋ってんだよ」 「なんだ、貴様は」 セブルスが顔を顰めると、イッキは少したじろいだが、 次の瞬間には立ち上がってテーブルに足を掛けていた。 「俺様は!暴風族『小烏丸』のリーダー!つまり、の上司だ!」 「くだらんな」 「何だとテメー、コラッ!」 「つーかイッキ!テーブルからその汚い足を退かせ!殴んぞ!」 「ただいま――!」 「ただいまでし!」 「あ、リンゴとウメが帰ってきた」 「リンゴ?ウメ?」 「同居人。そこのバカ男の幼馴染」 「・・・あれ?ちゃん?」 「おかえりー。結局連れてきちゃった。夕飯ひとり増えるけどいいよね?」 「大丈夫だよ!えぇと・・・」 「セブルス・スネイプだ。お邪魔している」 「スネイプさん、ですね。野山野林檎です。よろしくお願いします」 「白梅でし」 リンゴがお辞儀をし、ウメが敬礼のポーズをすると、はクスクスと笑った。 「何だ?」 「セブルスが『お邪魔している』って・・・」 「悪いか」 「私以外に言うの、珍しいなぁと思ってね。昔だって聞いたことないわよ」 「じゃぁちゃん、夕飯の準備してくるね」 「うん」 パタパタと台所に向かったリンゴを見ながら、 いつの間にかウメとともにテレビゲームを再開した蜜柑とイッキを放ってセブルスと会話を続けた。 夕飯が出来上がり、イッキ、リンゴ、ウメ、蜜柑、、セブルス、 そして先ほど帰ってきた亜紀人とで食卓を囲む。 セブルスだけが異色で、だけれども普通とあまり変わりなく箸が進んでいく。 ――セブルスだけはフォークだったが。 「、居心地が悪いのだが」 「仕方ないでしょ。・・・それにしてもリンゴはホントに料理上手いよね」 「そうかな?」 「うん、いつでもお嫁にいけるよ」 がそう言うと、リンゴは照れたように頬を掻いた。 「嫁と言えば――、結婚のことなんだが」 『結婚』という単語に、テーブルを囲んでいた、とセブルス以外の全員が噴き出した。 全員の注目を浴びる中、とセブルスはのほほんと話し込んでいる。 「あーそうね。約束したのいつだったっけ?」 「卒業したときだから――18のときだ」 「もう随分経っちゃったわね・・・。私の国籍ってイギリスと日本どっちだったかしら・・・ というか、残っているのかが心配だわ」 「イギリスにまだ残っているそうだ・・・魔法省の方だが」 「・・・あなたが調べたんだか知らないけど、随分用意周到ね。 私の実家の人は保証人になってくれないだろうし、セブルスも家族いないでしょ? だからダンブルドアに頼んだらどう?」 「そうだな。ホグワーツに戻ったら、事務に書類を頼んでおこう」 「そういうの職権乱用っていうのよ。新薬の特許とかで魔法省行くんでしょ? 自分で取りにいきなさいよ」 「ちゃん!早まっちゃだめ!」 「まだ結婚は早いでし!」 「!こんな奴よりももっといい奴がいるはずだ!」 「そうだよ!僕とかいるじゃん!」 「あー、お前の趣味には口出しする気はねぇけどよー・・・お前まだ14だろ? 日本でもイギリスでもまだ結婚できねぇ年じゃねぇか」 あまりのみんなの剣幕に、は吃驚して苦笑するしかなかった。 「えぇと・・・どこから説明したらいいのかしら」 夕飯を食べ終わり、イッキやリンゴに説明を求められて、は困った声を出した。 全てを話したら1日以上掛かる気がして、はどうしたものか、と考え込んだ。 ちらっと横目でセブルスを見ると、セブルスは頬杖をつき、差し出された林檎をフォークで突いている。 少しくらい助けてくれたっていいじゃない・・・、と心の中で毒を吐き、はイッキたちに向かいなおった。 「実はね・・・私は魔女なの」 「は?」 「、お前、タチの悪い冗談なんか言うなよ」 「冗談なんかじゃなくって、本当に。私は純血とマグルの混血。正確に言えば少し違うんだけど・・・。 マグルっていうのは・・・――私たち魔法使いは、魔法使いじゃない人のことをマグルと呼んでるの。 つまり、私とセブルスは魔法族で、イッキやリンゴはマグル。ここまでOK?」 イッキは訝しがり、リンゴは驚いていた。 まだまだ先は長い、とは話を続けようとした。 「それで私は――」 「お前が魔女っつーんなら、魔法使えるんだろ?」 「・・・使えるけど」 「やれるっつんならやってみせろよ。普通に考えてそんな話信じられるわけねぇだろ?」 「わー!ちゃん、僕見てみたいな」 「・・・セブルス、杖、部屋なんだけど」 「・・・アクシオ!」 セブルスは嫌々といった感じで杖を取り出すと呪文を唱えた。 すると10秒程経ってから、襖を突き抜けての杖がレイの手元めがけて飛び込んできた。 はセブルスにお礼を言い、イッキに向かって杖を向けた。 「イッキ、何か喋って」 「あ?何かって――」 「シレンシオ」 イッキが喋っている途中にが呪文を唱える。 すると、次の瞬間イッキは口をパクパクさせたまま、声が出せなくなった。 「「「「わー!」」」」 「とりあえず静かにしててね」 リンゴとウメ、蜜柑に亜紀人が手をパチパチと叩いた。 はテーブルの上に杖を置いてから、 ニッコリとイッキに言ったけれど、当のイッキは喉もとを叩いたり、 咳をしてみたりしてどうにか声が出せないかともがいているようだった。 「それで、私は10歳の頃からホグワーツ魔法魔術学校っていうイギリスの学校に通ってたの」 「イギリス?」 「そう。ちなみにセブルスは今、そのホグワーツの教師をやってるんだけどね」 「え、教師と生徒の禁断の愛?」 「・・・リンゴも黙らせるわよ」 「ゴメンナサイ」 は気を取り直すためにコホン、と咳払いをし、再び話し始めた。 2006/2/10 UP |