dream

翌日、久しぶりにぐっすり寝た私は、騒音で目が覚めた。もちろん、彼らの。

「お館さまぁぁぁぁっ!!」

バシィッ

「幸村ぁぁぁぁっ!!」

ドゴォッ

現在、朝の5時ごろです。
正確な時間は分からないけど。時計持ってないし、携帯はどっかに紛れ込んでるはずだし。面倒くさいしどうせ使えないだろうから、こっちに来てからはずっと放置している。必要ないんだもん。
空の明るさと体内時計から察するに、「朝の5時ごろ」はそうそう外れていないと思う。

――ったく、昨日も思ったんだけど、この二人、一体何なの？顔を見ればお館さま、幸村っていちいち叫んでさ。しかも叫ぶだけじゃ飽き足らず、殴り合いよ？全く、やってる本人は疲れないのかもしんないけど、周りの迷惑も考えろっつーの。大体にして、久しぶりにたくさん寝て、気持ちよく朝を迎えようとした瞬間にこんな怒鳴り声が聞こえるって非常識だよね。絶対常識無視してるよね。何？この世界には常識というものが存在しないわけ！？

「おい、怖ぇぞ」
「え、やだ。もしかして全部声にしてました？」
「･･･いや」

目を逸らされてしまった。
え、そんなに口にしてないよね。むしろちょっと殺気出ちゃったかなくらいだと思うんだけど。それともその殺気に当てられたのかな？そんなにアウト？

すると、後ろに立たれる気配がして、猿飛さんがちょうど私の後ろに来ると同時に私も振り向いた。

「諦めた方がいいよ。毎朝恒例だからね。･･･蝶の姐御」
「･･･姐御って何ですか、猿飛さん」
「いやぁ、伊達の旦那は『旦那』だから、蝶の姐御は『姐御』。その着物、すごい似合ってるしね」
「･･･いやに分かりにくい説明だなー」
「それよりもさ、佐助って呼んでよ、姐御」
「･･･姐御って呼ぶのやめたら呼んでもいいですよ、猿飛さん」

わざと『猿飛さん』を強調して、出来るだけ厭味に聞こえるように言う。ああ、私は本当に意地が悪い性格だなぁ。まぁ潤ちゃんほどではないと思うんだけど。潤ちゃんは人をからかうのに加えて色々と意地悪してくるからね。
それに、姐御っていうとこの前ビデオで見た極道もののイメージが･･･。まぁ極道と殺し名、表の世界の人間からしてみれば、大した違いはないんだろうけど。

「本当、いい性格してるよねぇ。･･･まぁ、序々にでも呼び方変えてよ」
「姐御って呼ぶのをやめる気はないのね。仕方ないなぁ･･･。佐助さんこそ、いつか呼び方変えてくださいよ」
「Luckyだったな、佐助」
「･･･らっきー？」

佐助さんは、首を傾げた。男がそんな仕草をしても可愛くもないですよ。

「幸運って意味だよ」
「へぇ･･･。らっきー、ね」

そこへやってくる一匹の犬――もとい幸村さん。
殴り合いを終えたもう一方、武田さんは政宗の方へ歩みを進め、縁側に座った。昨日の夜あたりから幸村さんは私の中で『犬』という地位に定着した。･･･そういや、人識も犬なんだよねぇ。

「いい汗をかいた！･･･殿！早いでござるな」

あんたらの所為で目が覚めたんだっつの。
マジギレモードに入ってもいいでしょうか。早朝からそんなに運動したくないんだけど、これなら解体する価値があると思わない？

「フ、フ、フ･･･」

「おい、？」
「姐御？どうしたの」

「――真田幸村。･･･この私が、殺して解して並べて揃えて晒してあげましょう」

朝起きてから懐に入れておいた月牙を取り出して構え、不敵に笑う。

「な･･･っ！殿？どうなされた！？」
「うーん。これは旦那が悪いと思うなぁ」
「佐助！？某が一体――」

「問答無用。フ、フ。絶望の世界を見せてあげましょう。ね、幸村さん？」

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2006/8/13 UP
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