「おかしいと思ってたんだよねぇ。門もないところに本陣、それに上杉に化けていた忍。 本陣――いや、偽本陣に着いたところで、伏兵にいた大多数の兵が別の方向に向かっていった」



「私も驚きましたよ。――来るはずの兵がほとんど戻ってこなかったので」



策というのは、駒がいて初めて成り立つもの。駒がいなければ始まらない。
策を取られたら、その策を覆すほどの力――もしくは策の裏を取れば、策には負けない。
これは2年前に身をもって実感したこと。

・・・策があるかもしれないと考慮して動いておいて正解だったなー。





「で、どうするの?子荻ちゃん。2年前と同じく、果敢にも私に挑戦してみる?」
「王将2人に、金将が1人。どうみても私の不利でしょう。 ・・・至極残念ですが、私には元の世界に帰るという目的がありますしね。 あなたと戦えば無事ですまないことは分かっています。 ・・・戦わないのも策のうちでしょう」
「子荻ちゃんならそう言うと思った」

私がにっこり笑うと、子荻ちゃんは刀を鞘に戻し、私は門のそばの大きな石に腰掛けた。


「じゃあ、政宗。私の出番は終了、ってことでいってらっしゃい」

政宗にひらひらと片手を振ると、政宗はジト目で睨んできた。
武田さんはかかか、と笑っている。

「オイ・・・勝手に役目放棄してんじゃねぇよ」
「だって今回は、どっちにしろ武田さんがやるんでしょ?」
「そいつ連れてでもいいからとにかく来い」
「分かりましたよーぅ」


子荻ちゃんの手を引っ張りつつ、ゆっくりと政宗と武田さんに付いていく。

実を言えば子荻ちゃんは、仲のいい友達BEST5に入るほどの付き合いだ。
敵対したのは過去1回のみ。それからなぜか慕われていたり、と。 多分それまでに、私の噂を聞く機会でもあったのだろう。 その辺は聞いたこともないから知らないけれど。
因みに一番仲がよくて一番敵に回したくないのは潤ちゃん。 多分敵に回したら決着がつかないし、面倒だから絶対敵にはしたくない。 それに潤ちゃん、根に持つタイプだし、しつこいし、自己中だし。





「甲斐の虎・・・。まっていましたよ」
「今こそ雌雄を決する時ぞ、上杉謙信」





武田さんが上杉と相対したところで、近くの塀に背中を預けた。 政宗は宿敵の対決に水を挟むのは野暮だと思っているのか知らないけれど、 近くで面白そうに見物している。(単に割って入るのが面倒くさいだけかもしれない)


さん、なぜあなたともあろう人が、あの男に従っているんです?」
「そんなこと言ったら、私はなぜ子荻ちゃんが上杉のところにいたのか聞きたいんだけど」
「・・・・・・策を使った上での一宿一飯の礼とでも言っておきます」
「なるほどねー。うん、うん。まぁ私も多少違うけど同じようなものだね。 私はね・・・あの人――伊達政宗と闇口の契りを交わしたんだ」
「・・・本当に?」
「本気と書いてマジの大真面目だよ。零崎とも約束してるし、契りを交わすのは1回だけ。 政宗に契約解除されたら私は完全に闇口を抜ける」
「疑問ですね。私があなただったら――すぐにでも零崎に入りますよ」
「フフ。私が闇口だって思い知らされる瞬間、分かる?」
「・・・・・・?」
「体がどうしようもなく、主を求めるんだよ。――私の中の半分の血が。闇口の習性が。 だから私は、こっちに来てそれに相応しいと思えた人間と契約した。ただそれだけ。 彼に決めた理由は、それ以上でもそれ以下でもない」
「ですが――元の世界に帰るとき、どうするんですか」
「その時はその時だと思うよ。・・・契約解除されたら帰るし、されなかったら帰らない。 ここはここで過ごしやすいし、私も、自分で決めた主君をそれなりに気に入ったしね。 それに、あっちの世界に戻る必要もない」


政宗を視界に捉え、フッと笑う。


「――まぁ、さんがいると分かったことですし、私もこの世界を楽しみましょう」
「そうそう。この世界じゃぁ、『表』に危険が溢れてる。私らの世界じゃなかなかないよ。 なんなら久しぶりに一緒に遊んでもいいし」
「・・・遠慮しておきます」



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2006/8/17 UP
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