子荻ちゃんと壁際で壁のようになりつつ話している間に、どうやら決着が着いたようで。


「上杉、どうやら軍配はワシの方に上がったようだの」
「くっ・・・」


斧を片手に持って仁王立ちする武田さんに、膝をつく上杉謙信。
誰が見ても勝敗は明らか。

正直言って、武田さん負けると思ってたんだけどね。 武田さんの武器はあんなに大振りだし、上杉謙信は速いし、細身の長刀だから。 私は大振りの武器は愛せない主義だから、ああいう武器を扱おうとは思わない。 必要以上に筋肉と体力を使いそうだし。
・・・あの戦い方を見て、《愚神礼賛》 シームレスバイアスを思い出してしまった私、バカ!

いくらただ振り回したり叩きのめしたり突いたりする戦い方が似てるからって、 いくらなんでもそれはないでしょう、私! いつからだか変な田舎者のキャラを演じ始めたあのバカ兄と一緒にしちゃ、 武田さんに失礼だってもんだよね、うん。武田さん、マジごめん。





「あれ、ちょっと遅かったかな?」
「お館さまぁぁぁっ!お待たせいたしたぁぁっ!」
「佐助ぇ!幸村ぁぁぁっ!よくぞ帰った!」





門のところで大声を出し、犬のように武田さんの元に突進していく幸村さんと、 いつも通りそんな幸村さんを見ても慣れて平気で冷静な佐助さん。

・・・子荻ちゃん、ドン引きしてるし。頬引きつってるし。マジで引いてるよ・・・
まぁ、仕方ないか。私も最初は驚いたもん、ね。


「大将、お疲れさん。ハイ、手土産」

そう言って気絶している女の人―― 先ほど上杉謙信に化けていたくのいちを上杉謙信のところに持っていく。

「・・・わたくしのうつくしきつるぎ・・・・・・!」
「なぁ、上杉よ・・・。そなたも伊達の元に来ぬか?」
「・・・・・・・・・」

武田さんが複雑そうな表情で上杉に言うと、上杉謙信は刀を杖のようにして立ち上がり、 刀を鞘に納めると、くのいちを抱きかかえて(俗に言うお姫様だっことやら)私たちに背中を向けた。
そして、顔を横へ向け、政宗を一瞥する。

「伊達のもとにくだるなど、そんな無様なまねは、できません」
「なっ・・・!上杉公!政宗殿に失礼でござるぞ!」

主君が貶された――って私も怒るべきなのだろうか、ここは。反応に困る。
でも、怒ったほうが下僕らしいのだろうか、と考えているうちに、上杉は次の句を告げていた。

「――ですが、もう戦国のおもてぶたいにでることも、あなたたちに会うことも、もうないでしょう。 命をたすけてもらったことにかんしては・・・すなおに礼をのべましょう」



「・・・最後まで変な男よのう」

「けっ、ナルシストが」



去っていく上杉謙信に、呆然とする私たちとバカにするように鼻で笑った政宗。 変っていうか・・・むしろ意味不明というか、理解不能というか。
なんなんだろうか、あの人。



「さぁて、戦も終わったことだし、帰りましょーよ。子荻ちゃんも、来る、よね?」
「・・・お供させていただきます」
「・・・。そいつも連れて帰んのか?」
「いいですよね、もちろん。優秀な《策師》ですし」
「まぁいいが・・・小十郎がなんて言うか」
「・・・ですって、小十郎さん。いいですか?」

「まぁ・・・仕方ないでしょう。政宗様がいいのでしたら小十郎は何も言いますまい」

「・・・!小十郎、いつからいやがった!」
「政宗様がナルシスト、と呟いたあたりです」
「・・・・・・・・・」

いきなり声を出した小十郎さんに、政宗は本気で驚いたようだった。 うん、予想以上に面白い反応だったなぁ。 小十郎さんも政宗を驚かせることができて、多少なりとも嬉しそうに口元が緩んでいる。

それに苛立ったように政宗は「てめぇら、帰るぞ!小十郎は他のヤツを連れて来い」 と言ったのだけれど、「もう既に門の外におりますが」と小十郎さんが言うと、 かなり拗ねたように「・・・早く帰るぞ!」と吐き捨てた。

・・・意外と可愛いな、私の主君は。





「ついていきますけど、私は伊達政宗に仕えませんからね」
「まぁ、別に戦で仕事してくれたら政宗も何も言わないと思うしいいんじゃない? どうせ私をこき使って終わりだと思うよ。子荻ちゃんは《策師》で頭脳労働だけど、 私はバリバリ肉体労働チームだからね」
「・・・何かすごく疲れているように見えるんですが・・・」
「だって一昨日だって、武田軍と戦したんだよ?私だって疲れるよ、人間だもん」
「(――だもん、って。だもんって、可愛すぎますよさん!)」

帰宅(・・・ていうか帰城?)中にこんな話をしていたのはここだけの話。

それから私たちは、来るときと同じように1日ほど掛けて、城へ戻ったのだった。



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2006/8/18 UP
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