武田と戦を終え、上杉と戦を終え、2週間。
子荻ちゃんもなんとか幸村さんたちの殴り合いに慣れてきた、8月上旬。(多分)



私は暇で暇で、しょうがなく政宗と小十郎さんに無断で城から抜け出すことにした。



だって引き篭もってたら絶対身体能力落ちると思うし。鍛錬所はごったがいしてるし。 っていうか、私を城の中に留めておこうとするのが間違っているんだよね。 幸村さんは団子食べに城下に行ってるってのに。佐助さんも結構出かけてるみたいだし。 武田さんは相も変わらずのんびりしてるけどさー。・・・この前子荻ちゃんと将棋してたし。 小十郎さんがいるから城内では護衛とかする必要ない、って言ったクセに、 何で城から出ちゃいけないわけ!?と、半ば私の心中は謀反状態。

で、鬱憤が溜まり溜まった挙句の脱走、ってわけです。

多分一刻もしないうちに小十郎さんが気がついて、 帰ったら確実にお説教っていうのが目に見えてるけどね! (双識みたいに泣き落としじゃないといいな・・・) まぁちょっと気分転換ついでに城下を見て回って、 政宗たちに気づかれずに戻れたら私の勝ちってことで。



そうして私は、門を飛び越えて、城の外に出た。



・・・出たはいいのだけれど。





「・・・ん?何でこんなところにがいるっちゃ?」





へー、城下町って、城の門から出ればすぐなんだー・・・。
じゃ、なく、て!


目の前には甚平っぽい和服を着て、細長い鞄を肩に担いで、麦わら帽子の男。



「零、ざ、き、軋識、さん?」
「何を言ってるっちゃ?」
「さようなら」



・・・・・・ここは、逃げるが勝ちってもんでしょう。





逃げる阿呆に追う阿呆、ってか!
いやいや、私は阿呆じゃありませんよ。何で追ってくるのさ、軋識!

が逃げるからに決まってるっちゃ」
「う、るさい!」



逃げる、逃げる、逃げる。
別に悪いことをした記憶はないけれど、今は私は『闇口』としてここに存在してるんだから! っていうかタンクトップにハーパンはやめたくせに麦わら帽子は健在ってどういうことよ!

軋識は苦手じゃない、むしろ『家族』としては大好きだけど、今会うのは非常にまずい。
なぜなら――




「いい加減止まるっちゃ」




気がつけば袋小路。追い詰められた鼠。はっきり言って、ヤバい。 垂直飛びの要領で飛び上がり、塀の向こうに行こうとしたけれど、 飛び上がった瞬間に足を掴まれてあっけなく私は地面にキスをした。

「・・・で、何でここにがいるっちゃか?」
「・・・この世界に飛ばされたからに、決まってるでしょ」
「ふむ・・・」
「あの、もう起き上がってもいいですか」
「・・・いつまでそこにいるつもりだったんだっちゃ?」

呆れたようにこっちを見る軋識を無視して、 私は半分起き上がると持ち前の瞬発力を使って横をすり抜け、 Uターンしてでっかくそびえ立つ城を目指して走った。





「門番さーん!私、わたしですよぅ!闇口!開けてくださーい!」





走りながら叫ぶ。 その声に門番さんは驚いてわたわたと門を開き始めた。 そして私は、半開きの門にスライディングして中に入る。


「門番さん、閉めて閉めて!」
「は、はい!」
「ふーう!スライディングセーフってやつですね」
「・・・・・・?お前、何処行ってた?」

そこに、地を這うように低い声が響いた。見上げれば、腕を組み、仁王立ちしている政宗。 何?小十郎さんだけじゃなくて政宗からもお説教決定ですか。

「Ah―・・・政宗さんじゃないデスカ」
?」
「や、まず落ち着きましょうよ!ね、政宗」

ピンチのあとにピンチって、どういうことよ。
私は立ち上がってまるで馬をどうどうと落ち着かせるように政宗の肩をぽんぽんと叩いた。


「あのなぁ・・・。心配させるな」
「ごめん、ごめ――」




ドガッ




音に驚いて後ろを振り返ると、あったはずの門は、半分ほどになっていた。
あぁ、実力行使、強行突破ってわけですか。さすが軋識。





「・・・。誰だ、その男は」




ピンチのあとにピンチが来て、さらにピンチ到来。



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2006/8/19 UP
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