「姐御、もうほぼ完璧じゃん」
「まだまだ、だよ」

回転手裏剣を軽く回し、感触を確かめながら木の枝に向かって投げる。 ザクッという小気味いい音がして、枝が落ちる。 ヨーヨーの感覚で手元に引き寄せ、ブーメランの如く回転手裏剣をキャッチ。

「もう十分じゃないの?かなり使いこなしてんじゃん」
「応用技を作りたいんだよね」

私はきょとんとする佐助に向かって微笑んだ。





事の発端は2日前。
政宗と話を終えた翌日に、佐助の元に行き、回転手裏剣の技を教えてもらえるよう頼んだ。 実は佐助の技を初めて見たときから、使えそうな技だと思っていたのだ。

意外にも佐助は二つ返事でOKしてくれ、その翌日から特訓が始まり今日で2日目。 コツを掴めば案外簡単だった。・・・と言ってしまうと佐助に失礼だろうか。

上手くいけば、この回転手裏剣で月牙の応用技が作れる。新型 《月の裏側》 アザーサイドオブムーン って感じだね。 自分で動くエネルギーに手裏剣の回転の分のエネルギーが加わって、殺傷能力は上がるはず。

さぁ、特訓しよう。

「佐助、教えてくれてありがとう。お礼は今度お団子でも買ってくるよ。 こっからは、企業秘密、ね。じゃ」

は?といった表情で固まったままの佐助を置いて、私は一人で練習できる場所に向かって歩みを進めた。 きっとこの調子なら、1日掛からずに作れる、はず。多分。





一人になり、集中する。

周りの木を敵だと思え。

「・・・ハァッ!」








「こんなもん、かなぁ」

新型 《月の裏側》 アザーサイドオブムーン 、一応完成。

《嘆きの悪魔》 グリーフィンデビル を使えない私には、有効な手段になる。


時刻は夕方。
既に今日の特訓は4時間を越えていて、さすがに疲れたので屋敷に戻ることにした。 一瞬もうちょっとだけ練習しようかとも思ったんだけど。 この程度じゃあ筋肉痛にはならないだろうけれど、流石に今日はぐっすり寝れそうだ。


「Ahn?、また一人で特訓してたのか?」
「うん、一応完成したよ。新技」
「そうか。・・・無理すんなよ」
「大丈夫だいじょーぶ。戦が近いんだから張り切っちゃうよ」





――その頃、軋識は。

「言うべきか、否か――」

軋識はというと、非常に悩んでいた。
それは、ある情報をに話すかどうかということで。

きっと、に話せば必死になって無理をするか、逃げる。 前みたいに――半ば自殺未遂のような行動をするかもしれない。 のためを思えば、絶対に話したくはない。

あいつも――あの、悪魔もこの世界に来ている、だなんて。

救いはある。だけど――先にあの悪魔に出会ってしまったらどうする。

・・・会わない可能性だってあるんだ。無駄に不安にさせることもない。
いざとなったら――





軋識はそこまで考えて、思考を打ち切った。



「いざとなったら、俺が殺す」



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2006/12/26 UP
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