「フ、フ、フ。久しぶりの大人数相手だなぁ。うきうき」


何気ないきっかけで、俺の部下となったコイツは、自分のことを『暗殺者』と言った。 ワケわかんねぇな・・・。 忍みたいなモンなんだろうか。 そういえば格好も忍みたいな服だし(それにしては長い羽織のようなものを着ているが)、 言動は不審者そのものだ。怪しすぎるだろう。

コイツは俺に向かって変な契約の呪文みたいなのを唱えた後、 ウキウキとした表情で、「どこに殺りにいけばいいですか?」と聞いてきた。 ・・・変わってるな。黙っていれば美人っつーのはコイツみたいなヤツのことを言うのか。

「とりあえずついて来い」と言った後移動を始めた途端、大勢の敵の部隊に遭遇した。 ・・・ざっと100人はいるだろうな。 まぁ隠れてたんだから周辺に集まるのも無理はないか。 Shit! 小十郎たちが心配だな・・・

刀を構えて敵部隊に切り込もうとしたとき、 あいつが枝の上でにこやかに両手を擦り合わせているのが見え、一気にハイな気分が消沈した。



「・・・オイ、お前大丈夫か」
「何がですか?あぁ、私の実力が心配なんですね。いいですよ」

何が「いいですよ」なんだ?・・・話が思いっきり噛み合ってねぇじゃねぇか。
コイツはポケットに手を突っ込み、『何か』を出した途端、1回消え、すぐに戻ってきた。
最初に移動したときも思ったが、コイツの移動速度は常人のものじゃねぇ。 特別な訓練――それこそ忍の訓練のようなものを積まなければ出せない速さだ。
俺は敵の攻撃を受け流して反撃しつつ、動作を見守った。
「フ、フ。ショータイムにもなりませんね。サヨウナラ、みなさん」

コイツは左腕を、片腕で自分を抱きしめるかのように持ってくると斜めへと勢いよく下ろす。
開いていた手を、軽く握って、口を開く。




「曲絃糸『零式』 《瞬間殺戮》 キルモメンツ





叫び声が、聞こえなかった。





一瞬、草原にコイツの声が響いたかのようだった。





あたりにあるのは、血みどろの肉塊。
それは、直前まで人間だったもの。





刀でやり合うってことは、致命傷で即死のヤツもいれば、 中途半端に苦しんで死ぬヤツも、最期まで立ち向かってくるヤツもいる。
戦場には叫び声と、金属音と、血の匂いで溢れかえるのが普通。



「フ、フ。あっけないもんですね」



まさに一撃必殺ってヤツか。
あたりを見渡して、震えた。


誰もいない。誰も立っていない。
俺とコイツ以外は誰も存在しない。


さっき俺に攻撃を仕掛けたヤツも、遠くから弓でこちらを狙っていたヤツも、全員死んでいる。
HA!それが《瞬間殺戮》 キルモメンツ の由来ってワケか。
――相手に息つかせる間もなく瞬間的に殺戮する。そのまんまだな。


「お前、すげぇな」
「まだまだこんなものじゃないんですけどね、有難くお言葉頂戴いたしますよ、『ご主人様』」
「Ah?そんな呼び方すんじゃねぇよ。政宗でいい」
「畏まりました、政宗様」
「政宗、だ」
「・・・分かりましたよ」
「よし、その敬語もなしだ。OK?
「・・・OK」
「つーかその調子で味方まで殺すんじゃねぇぞ」

そう言うと、はきょとんとしてこう言った。

「え、味方なんているんですか?」
「当たり前だろ・・・」
「あーいるんだー。面倒くさいなー。見分けるの大変だしなー。一人でお仕事当たり前だしなー。」
「家紋で見分けろ!殺すんじゃねぇぞ!」



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2006/8/2 UP
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