主となった政宗の意向で、(不本意なんだけれど)曲絃糸『零式』は使わないことにした。 曲絃糸『零式』は、人識が使っている曲絃糸とは別物で、特別製の道具を使っている。 射程距離は直線距離で5キロを超えるけれど、広範囲の敵を消滅させるため、 どこにいるかも分からない味方を殺さないようにするには使うわけにはいかない。 戦闘用というよりは、壊滅用の武器。 右手首にしている時計型のギミックには、 『壱式』『弐式』用の中・短距離用の曲弦糸を仕舞っている。 強度と鋭利さは他の得物と比べ物にならない。 他にもいくつか得物を常備しているけれど、使いやすさと殺しやすさはダントツ1位。 故に私がメインに使う武器になっているのだけれど。 仕方ない、別の得物を使うか――得物と言っても、私が使うのは、 下手したら、人識が使うような大型のサバイバルナイルに間違われそうな、小太刀。 下手したら、武器にも見えない特殊型ナイフ。 両手に小太刀と特殊型ナイフを握って、二刀流。 適当に振り回しているかのように、刀を振るう。 確実に、一撃で致命傷になるように、首や心臓ばかりを狙う。 時たま後ろを見て、ちゃんと政宗が付いてきていることを確認する。 ・・・私が前方の敵を殲滅してるからかなり暇そうだった。 「某は真田幸村!お館さまのために、貴公のお命頂戴する!」 槍を両手に構えた真っ赤な青年。 ・・・多分同い年くらいなんだろうけど。 「フ、フ、フ。《人類最強》でも《人類最終》でもないあなたが私に勝てるとでも? フ、フ。可笑しくて死んじゃいそうですね。 「おい、。コイツは殺すなよ」 「えー・・・」 「You see?」 「オーライオーライ。・・・仕方ないなー。面倒くさいなー。」 「いざ参る!」 あえて言えば猪突猛進か。 2本の槍を使って攻撃を繰り出していく真田幸村。え、真田幸村って真田幸村? まぁいっか。 ひょいひょいと避けて、槍を突き出されたときに小太刀1本で応戦する。 あ、驚いた。 女だからって舐めてもらっちゃ困るんだよね。 「フ、フ」 鳩尾に一発。 「グホッ・・・」 後ろに吹っ飛んで、停止。そう、停止させた。 まるで罠に掛かった蝶のように変な体制で静止する真田さん。 「・・・殺すなとの命令だったので、曲弦糸にしちゃったんですけどいいですよね?そこで静かにしていてくださいね。 あとで曲絃糸を回収にきますけど、少しでも動いたら、 多分コマギレになってバラバラ死体になりますから気をつけてください」 「くっ・・・お館さまぁぁぁっ!某を叱ってくだされぇぇぇ!」 「・・・マゾ?」 あっけない終わり方。 私を楽しませてくれる人はいないのだろうか。殺人に悦楽を覚える趣味はないけれど、 これじゃぁつまらな過ぎる。 だって武将と思われる男が1分ももたないってどうよ。 少なくとも潤ちゃんと試しに殺し合ったとき、2時間は戦ってたと思うんだよ。 ・・・まぁ潤ちゃんは《人類最強》だから別格か。 戦国時代だからしょうがないのかな。武器も結構大振りのものばっかだし。 こっちじゃ考えられないよね。暗器とかないのかな。 「開門―――っ!!」 「大将に続け―――っ!!」 「アレ?もしかして政宗もう行っちゃった?」 2006/8/3 UP 2009/2/14 微修正 |