「敵軍にも凄い武将がいたもんだね。・・・調査が不十分だったかな?」



なんだ、このオレンジ頭。
とりあえず敵ってことは間違いないみたいだね。

「片倉さん」
「・・・なんでしょうか」
「ここは一人でやりたいんですけど」
「しかし・・・」
「この人、結構強そうだし。遊びたいんですよね」
「・・・承知しました」

私はオレンジ頭と半ば睨み合うように対峙したまま、片倉さんを見送る。
聴覚を研ぎ澄ますと、仄かに政宗の声がしたのできっと今戦っているんだろう。

・・・なんか「ヤーハー!」とか聞こえる。頭大丈夫かな・・・。
人識系なのかな。ちょっと心配かも。





「はじめまして。俺は猿飛佐助。君みたいな強い武将を見逃してたなんて、大誤算だった」
「ふーん、忍、か。私は闇口。 同業者からは 《瞬間殺戮》 キルモメンツ って呼ばれてます。 フ、フ。知らなくて当然ですよ。さっき伊達についたばっかですからね。」

無駄に愛想よく言ってみる。0円スマイルを顔に固定しつつ、頭ではどうしようか考えていた。

武将っぽいからなぁ。
さっきの真田さんの例もあったし、殺さないほうがいいのかな? 不殺で穏便に解決というよりは殺さないでおいて仲間に入れちゃえーって感じなのかな。 それともさっきの真田さんのは気まぐれとか? うーん・・・まぁ私に、人の考えが分かるはずもないか。 ああでも不意打ちじゃなくて、彼とは本気で戦ってみたいな・・・

「さぁて、大将も伊達の旦那と戦ってることだし、俺様もお仕事といきますか」
「いいですよ。フ、フ、フ。遊んであげましょう」


あとあと面倒だから殺してあげない。(怒られるのヤだし)
武器は特殊型ナイフ『月牙』、通称 《月の裏側》 アザーサイドムーン ひとつ。
さぁ、しっかり絶望の世界を見せてあげますよ。





「くっ・・・」
「どうしたんですか?威勢がなくなってきてますよ」
「・・・美人の嗜虐趣味は迫力が違うねぇ」
「なんとでも。・・・でも闇口って基本マゾだよなぁ」
「・・・まぞ?」
「被虐趣味」

攻防をいったん止め、また均衡状態に戻す。戦闘開始から何分たったかな。結構経った気がするんだけど。
私はさっきから来る攻撃を全て、少し力を加えて反撃していた。 反則技っぽいのはちょっとマジになっちゃったけど。 つまり、全然本気を出していなかった。だって、この程度じゃあ私を殺すことはできないし。 私は少し枝とかでかすり傷を負ったくらい。それに対して猿飛さんは、傷だらけ。 だんだん飽きてきたし、結局そこまで強い相手でもなかったので (一般人の常識的にはそこそこは強いと思うけどね)、この遊びをやめたくなってきた。

「・・・さぁ、そろそろ終わりにしましょうか」
「・・・!」

月牙を胸の前に構え、いっきに距離を縮める。



「月牙『零式』 《月の アザーサ ――」



!出て来い!」



攻撃態勢そのままで停止。

その声はどう考えても、主君伊達政宗のもの。
・・・いいところだったのに。邪魔された・・・


猿飛さんの代わりに隣にあった木に八つ当たり。
ドガッとナイフで切りつけると、あっさりと木は倒れてしまった。

あ、やりすぎたか。
・・・まあ木ならたくさんあるし、いっか。





「じゃぁ、呼ばれたので。命拾いしましたね。さようなら」





私は、その後残された猿飛さんが、呆然と「怖ぇ・・・」と呟いたことを知らない。



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2006/8/5 UP
2009/2/14 微修正