こんな人生があるのか、それが率直な感想だった。 Once was light, Now darkness fall --Side B-- は「親からは一度たりと愛情をもらったことはありません」と言った。 それを聞き、ああ、は俺と同類なんだ、と思った。 それでも、俺には慕ってくれる仲間がたくさんいた。 ――その分だけ、俺の方がまだいいのかもしれない。 聞いたところから推測するに、に仲間らしい仲間がいたとは思えなかった。 俺の知らない誰かに、 女ということは愛されるべき存在ということだ。 「――闇口は奴隷だ、つってたな」 「はい」 思うがままに、言葉を発する。 横から幸村と猿飛の野郎どもに口を挟まれるが、俺は言葉を続けた。 「Shut up!うるせぇなぁ。てめぇらは黙ってろ。 ――なぁ、さっきお前は感情を捨てたって言ったな? だったらその捨てた感情を拾って来い。俺を主と認めたなら、これからは俺の為に生きろ。 別に俺は傷の舐め合いをするつもりはねぇ・・・――だが、これは命令だ。 今のお前のまま死ぬのは許さない。 俺より先に死ぬのは許さない。Do you understand?」 みるみるうちに、無表情から混乱へと表情を変える。 言っている意味が分からない、とでも言いたげな表情だ。 「別に難しいことを言ってるわけじゃねぇ」 「――十分難しいですよ・・・」 「難しくなんかない。拾ってこれねぇなら、これから覚えればいい。」 「――努力、します」 「ずっとこの城にいるんだろう?下僕が主を捨てて故郷へ帰るなんざ、滑稽過ぎて笑えねぇ話だぜ」 本当に困っているというように、眉尻を下げる。 それを見て、どうしようもなく愛しく思った。 何でこんないい女を放っておく野郎がいるんだか。 顔立ちも整っていて、(変な言動がなければ)品もよく、声も凛として通りがいい。 身体能力も、戦闘能力にも長けているのに、黙っていれば良家の姫よりも見栄えする。 思えばこの時、俺はすでにに対して特別な感情を抱いていたのかもしれない。 それは、同情でもなく、哀憫でも憐憫でも、ましてや慈悲でもなく、 ただ、を放っておけない、という感情。 の失った感情を、全て俺のものにしたいという感情。 の身体も心も、全て俺のものにしたいという独占欲。 ひとつだって、何も難しいことはねぇ。 この俺が、一から教えてやるんだからな。 2006/8/9 UP お気に召しましたらクリックお願いします。(ワンドリランキング) |